●症例 4  女児(乳児)

確定診断:石灰化上皮腫
   Pilomatrixoma (Calcifying epithelioma of Malherbe)

解説:
 石灰化上皮腫は若年者に多い良性腫瘍で、男性優位の報告と女性優位の報告がある。発生部位は頭頚部・上肢に多く躯幹・下肢には少ない。一般には単発であるが多発例の報告もある。 多くは無症状であるが時に圧痛や掻痒感を伴う。さまざまな色調をとりうる。潰瘍形成は稀で増大傾向は緩徐である。治療は摘出でよい。
 病変の主座は通常真皮内にある。発育様式は先天的な形成異常と後天的なもの(外傷、注射後)がある。病変は表皮あるいは付属器(とくに毛嚢または毛嚢原基)が真皮内で増生し、変性のための異物反応をおこし、石灰化や骨化を起こすとされている。
 病理学的にはShadow cellと呼ばれる核が消失し細胞質のみ好酸性変性をしつつ、表皮様構造を保って残存している細胞が特徴的である(病理1)。また、約10%に骨形成がみられる。これはbasophilicな生残細胞が消失し陳旧化したもので、shadow cellと接して無構造な硝子様物質が生じその外方にはosteoblast様になった細胞がみられるので間葉系細胞の骨芽細胞様化→骨形成という過程を経ると考えられる(病理2)。

病理1 病理1

病理2 病理2

 Hallerらは孤立性で境界明瞭な皮下腫瘍で、広範な砂粒状石灰化またはdense focal calcification を伴う場合は石灰化上皮腫を考えるべきと述べている。

参考文献
(1)Haller JO, Kassner G, Ostrowitz A, Kottmeler K, Perfschuk LP. Pilomatrixoma (calcifying epithelioma of Malherbe): radiographic features. Radiology 123(1):151-3,1977.
(2)榊原成純、福田美穂、川波喬、藤井敏男、大神浩. PilomatrixomaのX線像と超音波像. 臨床放射線 33(10):1163-6,1988.
(3)山際裕史. 石灰化上皮腫の病理(三重大学の経験). 臨床病理 28(9):928-31,1980.

 
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moderator : 山本和香子、杉本英治



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