症例 2 70歳代 女性

最終診断:ブルタールによる肝集積

骨シンチで肝にびまん性の集積を認める原因
・ジェネレーターからのアルミニウムの溶出
・肝シンチグラフィーの重複
・びまん性肝壊死
・肝転移
・転移性石灰化
・造影剤の投与
・鉄剤の投与
・アミロイドーシス

解説
・検査当日に業者より取り寄せたRIを使用しており、ジェネレーターの不良は考えにくく、同日施行の他症例には問題なし
・肝シンチの重複はなし
・CTにて肝には異常所見はなく、肝機能も正常
・造影剤の投与はなし
以上より、本症例ではブルタールを連日投与されており、骨シンチ検査日にもブルタールが投与されていることから、ブルタールによる肝集積と診断した。

ブルタールではMDPキット中のSnCl2が関与し形成された99mTcコンドロイチン硫酸鉄コロイドが肝集積の原因とされている。

通常、ブルタールによる肝全体に強く均一に集積が認められることが多い。
静脈内に投与されたブルタールは血清中から速やかに消失し網内系に貪食されるため、投与2時間後には投与量の10%程度に減少していると報告されており、呈示症例で、肝集積が淡かったのはブルタールと骨シンチとの静注間隔が少なくとも2時間ほどあったことが考えられる。

骨シンチにて強い肝集積が見られるの場合のみならず、呈示症例のように淡い集積の可能性もあるため、肝への集積を見た場合は肝転移などとともにブルタールも鑑別にいれておく必要がある。

参考文献
1) Frederick L. Datz: Gamuts in nuclear medicine:164-168
2) Chan H et al: Hepatic uptake of Tc-99m MDP on bone scintigraphy from intravenous iron therapy(Blutal). Clin Nucl Med 22:762-764,1997
3) 田中茂子ら: 骨シンチグラフィーにおける肝描出の一原因. 核医学 20巻8号:1175-81, 1983
4) 静注用鉄剤コンドロイチン硫酸鉄に関する臨床的ならびに基礎的研究. 臨床と研究41巻4号: 693-700, 1964

 
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 moderator : 大橋信子



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