症例 1 60歳代 男性

診断:
GIST; gastrointestinal stromal tumor

<概要>
消化管の間葉系腫瘍で最も多く見られ、CD117(c-KIT)の発現を特徴とする。潜在性に経過するものから悪性度の高いものまで、臨床的に変化が大きい。
食道のみ平滑筋腫が多く見られるが、これ以下の全ての消化管領域で最多の間葉系腫瘍となっている。頻度は100万人に10-20例程度と言われる。性差はなく、40才以下には殆ど見られない。
腫瘤は外方性に発育する傾向があり、割面はピンク〜褐色、灰色をなす。大型の病変では、内部に出血や壊死、嚢胞変成を含む。内部に形成された空洞が、消化管内腔と交通していることがある。

<GISTの画像診断>
64例のGISTを検討した文献*では、肛門直腸領域の症例は6例(9%)の頻度と報告されている。
消化管壁に由来する比較的境界明瞭な腫瘤として描出され、坐骨直腸窩や前立腺、腟壁への浸潤を含む外方性発育が高頻度に見られる。内腔側に突出するポ リープ状病変となることは極めて稀。
CTではperipheral enhancementを示す軟部組織腫瘤として見られ、MRIではT1WIにて中等度、T2WIで不整な高信号を示す。画像上の特徴から悪性度を類推 することは難しい。
鑑別疾患としてadenocarcinoma、leiomyoma/sarcoma、anal squamous cell carcinoma、malignant lymphoma、malignant melanoma、caricinoidなどが挙げられる。carcinomaは辺縁がより不整で、リンパ節腫大を伴うことが多い。
leiomyosarcomaは内方発育するポリープ状病変となりやすい傾向がある。

<参考文献>
*Angela D.levy et al. Gastrointestinal Stromal Tumors: Radiologic Features with Pathologic Correlation. Radiographics 2003;23(1)283-303

 
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 moderator : 古橋 哲



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