症例7:40歳代 男性 | |
直ちに開腹術が施行されたが,約1mにわたり小腸の変色を認めた. 切除小腸 110 cm, 切除断端部を除いてほぼ全長にわたって粘膜壊死,全層にわたる壊死が非連続的にみられる. |
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確定診断:NOMI(Non-occlusive
mesenteric ischemia) 血栓または閉塞による器質的閉塞を伴わない腸循環障害により腸管虚血あるいは壊死をきたす疾患 |
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NOMI 心不全,ショック,hypovolemiaなどの全身の低灌流状態 ↓ 脳や心臓などの重要臓器への血流を維持するために血流の再分配が生じ,腸管や四肢の血流が犠牲にされてさらに減少する ↓ 低灌流状態が一定時間続くと腸間膜動脈の末梢血管の交感神経が過剰に反応して攣縮し,腸管虚血を生じる |
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基礎疾患・誘因 頻度 NOMIの特徴 |
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診断基準 ・腸管壊死の領域に相当する腸間膜動脈あるいは静脈に閉塞がみられない ・腸管の虚血及び壊死が分節状で非連続的 ・病理組織学的には出血性及び壊死性変化で,小静脈にフィブリン血栓を欠く |
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CT所見 造影CTでSMAが起始部から7〜8cm末梢まで造影され,造影不良な腸管が広範囲に存在する所見(田畑ら) SMA血栓症 起始部から3cm以内 塞栓症 起始部から3〜8cm |
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血管造影 血管攣縮の特徴 (Siegelman,et al) 1. 分岐根部の狭小化 2. String-of-sausages sign(攣縮と拡張が交互に発生する) 3. 辺縁動脈などの末梢部の造影不良 4. 腸管壁血管の造影不良 |
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血管造影が早期診断に有用 しかし,実際術前にAGが施行されたのは8〜21 % リスクファクターを有する高齢者が腹部症状を呈し,非侵襲的な画像診断で原因を特定できない場合には全身状態が良好なうちにAGを施行すべき |
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治療 1. 血管攣縮を惹起するhypovolemiaなどの是正 2. Digitalis製剤や血管収縮剤はなるべく中止する 3. 血管造影で本症と診断されたら塩酸papaverineの持続動注(30-60 mg/hr,少なくとも24時間以上)を開始 4. 腹膜刺激症状が持続,出現した場合には開腹し,術中術後も動注を持続する |
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moderator : 佐々木真弓,西巻 博,磯部義憲 |
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