症例 1:80歳代後半 男性

主訴:腹痛・発熱
現病歴:
 11年前から多嚢胞腎による慢性腎不全のため通院していた。ネフローゼとなり、1ヶ月前より血液透析導入のため内科へ入院していた。
 入院中のある日、昼から腹痛と水様下痢が生じた。翌日、炎症反応上昇(WBC16200 CRP10.35)と37℃の発熱を認めた。鎮痙剤にて改善せず、さらに翌日早朝、腹痛が増悪した。

既往歴:
高血圧(40年前〜)、高尿酸血症(14年前〜)、ASO(8年前左CIAバイパス術)、白内障(3年前手術)、胃癌(2年前手術 B-沚ト建)

臨床所見
・身体所見:意識清明、苦悶様。
 BP135/78、HR82整、 BT37.2℃、SpO2 94%(room air)
 両側呼吸音はやや低下。
 上腹部手術痕あり。右下腹部に圧痛あり。腸蠕動音は低下。
 腹壁は平坦・軟で、筋性防御・反跳痛無し。
・検査所見:
 WBC 14300/μL(好中球94.9% リンパ球3.5% 単球1.6%)、Hb 7.6g/dL、Plt 16.2万/μL、
 TP 3.9g/dL、Alb 1.8g/dL、GOT 10IU/L、GPT 3IU/L、
 γ-GTP 14IU/L、T-Bil 0.3mg/dL、
 BUN 41mg/dL、Cr 5.2mg/dL、CRP 20.47md/dL
 Na 139mEq/L、K3.1mEq/L、Cl 108mEq/L、Ca 6.5mg/dL、P 4.8mg/dL

●提示画像(画像をクリックすると拡大された画像がみられます)


胸部(坐位)および腹部(臥位)ポータブル単純X線写真

左第4弓の拡大。右下肺野濃度上昇。下腹部に小腸gas?

腹骨盤部単純CTおよび造影CT

・両側胸水の貯留と下葉無気肺。
・多嚢胞腎。
・腹水の貯留と腹腔内脂肪濃度上昇。
・皮下浮腫

・多量の腹水が貯留、骨盤底で腹膜の軽度肥厚が見られる。
・腹水中に微量のairを伴う高濃度貯留物。
・小腸の浮腫状壁肥厚と拡張。

・S状結腸〜直腸にかけて憩室が多発。
・直腸には他の憩室とは異なる形状の空気濃度があり、周囲に線状高濃度を伴う。

矢状断MPR

冠状断MPR

VR

経過

・CTにて異物(PTP疑い)による下部消化管穿孔および汎発性腹膜炎と診断され、同日に開腹手術が施行された。
・直腸Rsに潰瘍(2×1cm)および穿孔を伴う憩室があり、PTP(未開封、2.5×1.5cm)が刺さっていた。院内で処方されていた降圧剤であった。
・ハルトマン手術・洗浄ドレナージが施行された。術後はICU管理・CHDFを要するも、全身状態改善後に血液透析導入され、他院へ転院となった。

●最終診断へ

Moderator:戸田 一真

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