症例1 70歳代 男性
最終診断

IgG4関連硬化性病変

・自己免疫性膵炎
・硬化性胆管炎
・(硬化性唾液腺炎)


自己免疫性膵炎診断基準2006(厚労省難治性膵疾患調査研究班・日本膵臓学会)

発症に自己免疫機序の関与が疑われる膵炎

高γグロブリン血症,高IgG血症や自己抗体
ステロイド治療有効

全身的疾患?

硬化性胆管炎、硬化性唾液腺炎、後腹膜線維症の合併

臨床的特徴

上腹部不快感
胆管狭窄による閉塞性黄疸
糖尿病
中高年男性

膵癌や胆管癌との鑑別が重要(×ステロイドによる治療的診断)

診断基準
1.膵画像検査にて特徴的な主膵管狭細像と膵腫大を認める
2.血液検査で高γグロブリン血症,高IgG血症,高IgG4血症、自己抗体のいずれかを認める
3.病理組織学的所見として膵にリンパ球,形質細胞を主とする著明な細胞浸潤と線維化を認める

上記の1を含め2項目以上を満たす症例は、自己免疫性膵炎と診断する
但し、膵癌・胆管癌などの悪性疾患を除外することが必要である

自己免疫性膵炎の画像診断 自己免疫性膵炎診断基準2006
1.膵腫大
 US、CT、MRIで膵のびまん性あるいは限局性の腫大
2.膵管狭細像
 主膵管にびまん性あるいは限局性に狭細像
  1)典型例では狭細像が膵管長の3分の1以上。 3分の1以下でも狭細部より上流側主膵管に著しい拡張を認めないことが多い。
  2)典型的な膵画像所見を認めるものの血液検査で異常を認めない場合は自己免疫性膵炎が含まれる可能性もあるが、現状では病理組織学的検査を行わなければ膵癌との鑑別は極めて困難
  3)膵管像は基本的にERCPなどの直接膵管造影が必要

膵外病変・周辺疾患との関係 自己免疫性膵炎診断基準2006
本症には硬化性唾液腺炎、硬化性胆管炎、後腹膜線維症などを合併することがある
硬化性唾液腺炎のほとんどは抗SS−A抗体、抗SS−B抗体陰性であり、シェーグレン症候群と異なる可能性がある
原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis: PSC)と本症にみられる硬化性胆管炎様病変ではステロイドに対する反応・予後が異なり,別の病態である

本例における診断のポイント
1.臨床的特徴
  高齢男性
  亜急性〜慢性発症:食欲不振、黄疸、(顎下腺腫大)
  ビリルビン上昇、アミラーゼ正常
2.自己免疫機序の関与?
  高IgG血症と高IgG4血症
3.画像所見
  下部胆管・主膵管の限局性狭細像
  膵(・顎下腺)腫大

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Moderator : 相部 仁