症例6 50歳代 女性
頚部襟状切開副甲状腺腫瘍摘出術
嚢腫壁は非常に薄く、内容液は白色透明の漿液性。穿刺吸引(100 ml)後に摘出した。
甲状腺、食道、気管などと交通や癒着は見られない。



嚢胞壁を裏打ちするのは、腺上皮細胞や副甲状腺の主細胞を中心とした1層の立方上皮。
特殊染色で、細胞は副甲状腺ホルモンPTHに強く反応。


解答
縦隔内に進展した(非機能性)副甲状腺嚢腫の1例
副甲状腺嚢腫
  • 剖検例では0.5mmの微小嚢胞を含めると約9%の頻度。
  • 頚部腫瘤として臨床的に問題になることは稀で、縦隔内に進展するのは約10%。
  • 非機能性(狭義)と機能性に大別され、前者が88.5%で後者が11.5%。
  • 40才代〜50才代に好発。非機能性は男性に、機能性は女性に多い。
  • 非機能性は、濾胞内に分泌物が貯留して嚢胞化するという説や、第3鰓嚢の遺残物が貯留嚢胞化する説。
  • 機能性は、腺腫または過形成が出血など2次的に変性を起こし嚢胞化したという説。
  • 非機能性嚢胞の嚢胞壁は、結合組織と内面の1層の立方上皮から成る。内容液は水様透明。
  • 機能性嚢胞の嚢胞壁は、主細胞腺腫の組織があり、壁も厚い。内容液は血性ないし褐色調。
  • 発見動機は気管、食道、反回神経の圧迫症状や副甲状腺機能亢進症などがあるが、無症状のことも多い。
  • 非機能性嚢胞の治療は、再発性のものや気管・食道を圧排するものは手術適応であるが、テトラサイクリンやエタノール注入による保存的治療の報告もある。
  • 機能性嚢胞の治療は、嚢胞を含む完全摘出術。
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Moderator : 北島 一宏