脳血管自動調節機序autoregulation of cerebral blood flow
- 脳循環は脳血管自動調節機序により、脳血流の恒常性が維持されている。
- 脳血管の小動脈と細動脈に存在。筋性と神経性により、急激な血圧変動(60〜150mmHg)に対して脳血流を一定に保とうとする防御機構。
- 調節可能域を超える血圧上昇・血管内皮細胞の障害物質の存在などにより、脳血管の筋性反応が抑制され、脳血管拡張により脳血流維持不能となり、BBBの破綻から血液成分の血管外漏出(血管性浮腫)がおこる。
高血圧性脳症:病態の考え方
- 高血圧に伴う脳灌流圧上昇が毛細血管の脳循環自動調節能を超える→脳血管の強制的な拡張→血管性浮腫
- 高血圧に伴う脳血管収縮→乏血→細胞性浮腫→血管性浮腫
- 脳循環自動調節能の破綻→血管壁の障害
→低酸素脳症・脳虚血(脳梗塞)
症状
- 急激な頭痛・悪心・嘔吐
- 意識障害
- 痙攣
- 眼症状(視野障害、視力障害など)
- 脳局所神経所見
*SBP>250mmHg, DBP>150mmHgで発症。自動調節能の変化後、数秒以内で始動、
15〜30秒で完成する。
*高血圧を呈する病態、特に慢性腎不全・腎透析に伴うことが多い。
*痙攣発作:皮質・皮質下白質での血管性浮腫による脳実質内水分増加の刺激による。
*子癇 eclampsiaは高血圧性脳症である。
画像所見と考え方-1
- 後頭葉から側頭葉・後頭頂葉皮質から皮質下白質を主とするT2 延長と腫脹。対称的ではないが両側性。前頭葉が含まれることあり。重篤になれば病変は視床・基底核・島・大脳白質深部・橋におよぶ。
- 脳血流自動調節能に影響する脳血管周囲交感神経分布は椎骨脳底動脈系と後頭葉脳動脈血管系に乏しいことから、これらの血管支配領域に血管性浮腫が起こりやすいと考えられている。
画像所見と考え方-2 DWI・ADC
- 血管攣縮による虚血と脳血流自動調節能の破綻に伴う血管性浮腫(可逆的)
拡散が亢進;DWI低〜等信号、ADC上昇
- 高血圧により脳血管収縮から脳虚血や脳梗塞となる場合の細胞性浮腫(不可逆的)
拡散の制限;DWI高信号、ADC低下
鑑別診断
- 脳梗塞 infarction
- 血管炎 angitis due to SLE, sarcoidosis, Behcet
- 脳炎 encephalitis, 髄膜脳炎 meningoencephalitis
- 橋神経膠腫 pontine glioma
- 橋中心髄鞘崩壊症 central pontine myelynolysis
- 薬物中毒 drug induced leucoencephalopathy
(Cys A, FK506 他の免疫抑制剤、化学療法剤、多量ステロイド剤など)
- 免疫抑制状態 immunosupression (臓器移植・骨髄移植後)
参考文献
- HinchyJ et al:A reversible posterior leukoencephalopathy syndrome. N Engl J Med 334:494-500,1996
- Sean O et al: Pontine Reversible Edema: A Newly recognized Imaging Variant of Hypertensive Encephalopathy? AJNR 21:243-245, 2000
- Makoto Mishie et al:Posterior Encephalopathy Subsequent to Cycrosporin A Presenting as Irreversible Abulia:Internal Medicine 42:750-755 2003
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