第305回 東京レントゲンカンファレンス
2008年05月22日開催

症例8 60歳代 男性
 


右肺上葉に均一に造影される腫瘤性病変を認める。
胸膜への進展はCTでははっきりしない。
胸壁の脂肪層が観察され、胸膜(壁側、臓側胸膜)からの病変が示唆された。

 


T1WIでは右肺上葉に低信号の腫瘤性病変を認める。


T2WIでは右肺上葉に高〜低信号の信号が混在した腫瘤性病変を認める。
胸壁には明らかな浸潤は認めないが、可能性がある。
病変は有茎性ではなく、広基性である。


T1WI造影後では右肺上葉に均一に造影される腫瘤を認める。

画像所見のまとめ
・T1WIにて低信号、T2WIにて高〜低信号の混在した腫瘤を認める。
・胸膜から発生しているようである。胸壁への浸潤はない。
・Gdにて均一に造影される。

鑑別に、起源から
(1) 肺からの病変
・充実圧排型に進展する肺癌
 肺小細胞癌
 肺腺癌
 扁平上皮癌        など
(2) 胸膜からの病変
・SFT
・中皮腫          など
(3) 胸郭外からの病変
・骨軟部腫瘍として
 ユーイング肉腫
 軟骨系腫瘍
 悪性線維性組織球症    
 神経原生腫瘍       など

胸膜からの病変
・SFT
胸郭外からの病変
・神経原生腫瘍
胸壁の肋間神経から生じることが多く、病変は胸郭の脂肪層より内側にあるので、SFTと画像上は診断した。

・VATSによる摘出術が行われた。
・検体は5cm大であり、右上葉肺尖部と有茎性 に連続していた。
・臓側胸膜由来のSFTと診断された。

 

診断は Solitary Fibrous Tumor (SFT)

SFTは、成人、中高年に発生する比較的まれな腫瘍で、1931年に報告された。
以前、限局性中皮腫と命名されていたが、最近では未熟間葉系細胞由来と考えられている。
現在、軟部組織や、乳腺、肝、腎、膀胱、神経系などあらゆる部位に発生することが分かっている。

胸膜に発生するSFTは
発生頻度:10万人当たり2.8人
発生部位:臓側胸膜が70%、壁側胸膜が30%、有茎性66%、広基性33%と報告されている。
治療:基本的には切除が必要、腫瘍基部より1〜2cmのマージンを取るべきとされている。
再発:再発は15%とされており、そのほとんどが切除部位付近であり、有茎性よりも広基性のものに多かったとされている。

悪性:12%が悪性であったと報告している。
悪性のものは、組織学的には、細胞密度や、分裂像が判断に有用であるが、画像上は、出血や壊死が捉えられれば悪性の可能性を予想することができる。
また、再発に伴って、病変の組織像が悪性化していく可能性も報告されている。

SFTはMRIでの所見が報告されているが・・・
典型的には、T1WI、T2WI 、ともに低信号になると報告されている。
しかし、MRIの信号は、腫瘍内の構成にてさまざまに変わる。

 
Solitary Fibrous Tumor (SFT)
・胸膜から発生したSFT
・T2WIにて典型的な低信号を呈さない症例であった。
・そのほかの画像所見は比較的典型的であった。

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Moderator:細川タカヒロ