第308回 東京レントゲンカンファレンス
2008年10月16日開催
症例7 80歳代 女性
 
  卵巣甲状腺腫
struma ovarii
 

・1889年Boettlinが初めて報告した。
・全卵巣腫瘍の約0.3%、奇形腫全体の約2.7%を占めるとされる。
・単一胚葉系胚細胞由来で甲状腺組織のみが増殖したものをいう。良性のう胞性奇形腫の一成分としての甲状腺組織の出現頻度は報告者により1.5-28.5%の開きがある。
・ 良性がほとんどであり、悪性はまれとされている。

CT所見
CT:multicystic な腫瘍
  隔壁の肥厚を認める
  造影CTでは、壁が造影される。HDな充実成分が疑われる。
  脂肪および石灰化を認める。

MRI
T1WI:hyposignal multicystic mass 壁の肥厚を認める
T2WI:全体的にはhypersignal cystic mass ステンドグラス様を呈している。
   CTでHDなところはhyposignal intensityを呈している。
T1WI脂肪抑制:
 脂肪が抑制されています。

病理(マクロ)

 

病理(ミクロ)






 

まとめ
・甲状腺濾胞内の内容物はその濃度により多彩な信号強度を示すことから、
粘液性のう胞腺腫等が鑑別対象となる。
・ 充実性成分の少ない本腫瘍は粘液性腫瘍と鑑別が困難で頻度的にも粘液腫瘍のほうが圧倒的に多いが、
CTで高吸収域の充実成分を認めるときに疑うべきである。

 
 

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Moderator:嶋田 守男