第310回 東京レントゲンカンファレンス
2009年1月22日開催
症例8 50歳代 男性
 
  小腸アニサキス症
anisakiasis of the small bowel
 

CT所見まとめ
・小腸に限局する粘膜下層の浮腫性肥厚を 認める。
・口側の小腸の拡張は高度で、 食残の通過障害が認められる。
・比較的多量の腹水が目立つ。

US
・粘膜下層の浮腫性肥厚を認める。
 (あたかもトウモロコシの実が並んでいるように見える"Corn sign"。)
・虫体と思われる線状の構造物を多数確認。
・活動性は低下している印象。

経過
・アニサキス抗体価67.3と高値であった。(基準値0.34以下)
 (前夜午後8時に寿司で青魚を食べていた。)
・安静、補液のみで症状は軽快。本人希望により4日後退院となった。

アニサキス症(Anisakiasis)
・Anisakis亜科に属する線虫の幼虫を経口摂取することにより生じる病態。
・アニサキスの幼虫の寄生したサバ、ニシン、スルメイカなどの魚介類と生食することにより起こる。
・10月から翌年5月頃に多く発生。

発生機序
・幼虫の消化管壁刺入による機械的刺激
・Arthus型アレルギーの関与

寄生部位
・食道から直腸まで全消化管に病変を来たす。
 胃の罹患が圧倒的に多い。(93.4%)
・小腸では回腸が多く、罹患範囲は50cm以上が36%、50cm未満が64%。
・粘膜に刺入した幼虫は壁を貫通し、腹腔内で好酸球性肉芽腫を形成することもある。
 (消化管外アニサキス症)

症状と治療  
胃アニサキス 腸アニサキス
・原因食摂取後、 数時間で
 上腹部痛、悪心嘔吐出現。
・内視鏡で胃壁に侵入する虫体を確認、
 摘出する。
・原因食接種後、数時間から4,5日で
 悪心、嘔吐、下腹部痛、腹部膨満感出現。
・CT,USで疑い抗体価測定
 保存的に加療する。

アニサキス症の予防
魚介類の生食を避ける。
・アニサキス幼虫は熱に弱い。(70℃以上、−25℃以下では瞬時に死滅。)
・薬剤には強い抵抗性。
 (1%食酢で100日、1〜2%食塩水で175日以上の生存が確認されている。)酢漬けもダメ

小腸アニサキス症の診断
CTでは
 1.限局性の小腸の浮腫性肥厚、
 2.口側の小腸の強い拡張を認めた。
 3.全身状態が比較的良好である割に腹水が目立つこと。
超音波では 
 1.粘膜下のトウモロコシ様の浮腫性肥厚、
 2.内部に線状の構造物を確認。(アニサキス虫体と思われる。)

臨床的分類
緩和型・・初感染による病型
      幼虫自体と幼虫から放出される代謝産物や脱皮液などの刺激により、
       腸管の局所に炎症反応が生じ、炎症細胞の浸潤により限局性の小膿瘍が形成される。
激症型・・既に感染を受けている人で起こるArthus型アレルギー反応。
      抗原抗体反応により産生されたchemical mediater が関与。
・腸アニサキス症では激症型が多いとされ、限局性の腸炎により腸管麻痺と内腔の狭窄を来たす。

 
 

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Moderator:古賀 清子