第311回 東京レントゲンカンファレンス
2009年2月26日開催
症例5 40歳代 女性
 
  クローン病
Crohn disease
 
来院時血液検査所見
WBC 4600 TP 5.5 CK 160
Hb 16.8 Alb 3.8 Amy 285
Ht 50.6 BUN 18 BS 91
Plt 32.3 Cr 0.63 CRP 0.3
    T-Bil 1.0    
    AST 13    
    ALT 11    
    LDH 196    
    ALP 160    

画像所見
・回腸から空腸は全周性に肥厚
・上行結腸から横行結腸まで全周性の粘膜浮腫
・回結腸間膜・右結腸間膜はリンパ節腫大
・回腸遠位部で消化管破裂
・半固形状の腸管内容物が腹腔内に漏出
・部分的な腸管濃染不良域(潰瘍形成?)
・腹水貯留
・汎発性腹膜炎

画像のまとめ
・回腸遠位部で消化管破裂
  半固形状の腸管内容物が腹腔内に漏出
  汎発性腹膜炎、腹水貯留
・空腸から回腸は全層性に肥厚
・上行結腸から横行結腸まで全周性の粘膜浮腫
・回結腸間膜・右結腸間膜はリンパ節腫大
・潰瘍形成

術中所見
消化管穿孔の診断にて緊急手術を施行

回盲部切除
回腸末端に著明な腸管壁、腸間膜の肥厚、回腸末端に径2cm程の穿孔を認めた

病理所見
回腸に陳旧の潰瘍形成、線維化、リンパ濾胞、腸間膜リンパ節に明瞭な肉芽腫病変が散見

最終診断
Crohn病による回腸遠位部の穿孔+汎発性腹膜炎

Crohn病
・非乾酪性類上皮細胞肉芽腫
・壁の全層性炎症
・肉眼的には縦走潰瘍、敷石像、不整形潰瘍
・10歳後半から30歳代前半
・白人に多い
・男性に2-3倍多い
・腹痛、下痢、発熱、体重減少、肛門病変

偽膜性腸炎、潰瘍性大腸炎、虚血性腸炎、感染性腸炎と比較すると、
比較的に厚い壁肥厚と腸管壁内部濃度、造影効果が均一であるということが特徴。

 

Crohn病の画像所見
・右側結腸に好発し、小腸病変を含む
・厚い腸管壁肥厚
・均一な造影効果
・腸間膜線維増生(fibrofatty proliferation)
・Comb sign
・膿瘍形成

Crohn病と消化管穿孔について
・報告では1.5%に穿孔が生じた
・穿孔は罹患から平均で3.3年(1ヶ月−10年)1年以内が43%、5年以内が81%であった
・穿孔の機序:1.肛門側での狭窄に伴う消化管内圧の上昇
       2.壁内の虚血(消化管内圧の上昇に伴う)
       3.腸炎を支配している血管の虚血  Adrian J.Greenstein et al:Ann surg:1987:january;72-76

 

 
 

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Moderator:松井 洋