第312回 東京レントゲンカンファレンス
2009年4月23日

症例4 30歳代 女性

 

    リンパ脈管筋腫症
  lymphangioleiomyomatosis( LAM )

 

画像所見のまとめ
・両肺に10mmまでの円形嚢胞を認める。
 壁は通常の気腫に比べ、若干厚いように見える。
・腹部傍大動脈領域から左腸骨動脈領域、鼠径部に低吸収な腫瘤性病変を多数認める。
・左卵巣腫瘍を疑われた骨盤内病変も、CTで低吸収で、MRIではT1WIで低信号、T2WIで高信号で、cysticな印象。
・また、左肺底部に約10mm大の結節を認める。
 この結節も縦隔条件では比較的低吸収である。
・なお、CT・MRIでは左卵巣は描出できていないが、USでは正常な卵巣が子宮に接して認められたとのこと。

病理所見(左鼠径リンパ節)
 
・肥大した平滑筋細胞、リンパ管と思われる裂隙様、
  海面様の組織が認められる。
・SMA、D2-40、HMB45も陽性であり、
 (他院貸し出し中のため、画像なし)LAMと診断された。

Lymphangioleiomyomatosis(LAM)について
・妊娠可能な女性におこる肺のリンパ管、胸郭、腹部リンパ管の非定型の平滑筋の異常増殖。
・主訴は呼吸困難であることが多い(59%)。
・結節性硬化症の合併例もみられる。

胸部所見の特徴
・多数の壁の薄い(普通の気腫よりは目立つ)嚢胞。
 通常10mm前後。円形で、均質な病変。
・縦隔や肺門のリンパ節腫大は約50%にみられるとの報告もある。
・気胸、乳び胸、肺出血が特徴的な合併症。

LAMにおける肺外病変について
・腎血管筋脂肪腫の合併(20-50%)。
・肺外のLAM(Lymphangioleiomyomatosis)の好発部位は後縦隔、後腹膜、傍大動脈領域、腸間膜、腎動脈周囲。
・症状は、腹部、側腹部、骨盤部の痛み。腹部膨満。
 失禁、乳糜尿、血尿。下肢のリンパ浮腫や知覚異常。
・大きな病変は乳糜性の嚢胞を含み、日内変動も伴うため、日単位で症状が異なる(増悪する)こともある。
・頻度は文献により様々(11-70%)。


LAMにおけるリンパ節病変の画像上の特徴
報告されている文献での特徴は、均一な低吸収を示している。
  ↓
intranodal cystic changeを反映しているものと思われる。

女性の腹部骨盤でかなり低吸収な病変を認めた場合は、
LAMを念頭に置き、肺病変、腎血管筋脂肪腫、
結節性硬化症の有無を確認することが重要。


肺以外の病変から発見されたLAM患者でも、無症候性の肺病変が認められる。
肺外の症状が先行し、1-2年で肺病変を生じた報告もある。

 

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Moderator: 高木 康伸