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第314回東京レントゲンカンファレンス
2009年6月25日
症例6 10歳代 女性
   

巨細胞腫
giant cell tumor

 

画像所見のまとめ
[CT]
・トルコ鞍〜蝶形骨洞を占める腫瘤。
・大部分は低吸収の多房状構造だが腹側に充実部分
・トルコ鞍底や斜台は破壊され、隔壁部分や充実部分に強い増強効果
・明らかな石灰化はない。
[MRI]
・腫瘍は斜台を主座
・多房状の部分はT2WIで高信号。腹側には低信号
・正常な下垂体は圧排偏位しているが後葉のT1強調像高信号域は保たれている
[FDG-PET]
・腫瘍部に高集積なし。

手術
・11月中旬 内視鏡下経鼻腫瘍摘出術
・術後は複視が改善したが、3月までに腫瘍が再増大。
・3月下旬 γナイフによる定位放射線照射施行。
・4月中旬 FSH 12.2mIU/mlと高値
・4下旬 再手術

鑑別診断
・斜台正中→脊索腫:骨破壊がより強い傾向がありそう
・斜台非正中→軟骨肉腫:rings and arcs状石灰化があるはずだが、T2WIで著明高信号の多房状腫瘤は合致

他の鑑別:異所性下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫

病理診断
Giant cell tumor of the clivus(斜台部巨細胞腫)

均一に分布する破骨型多核巨細胞
腫瘍内には細血管が介在,
間質に線維化や硝子化を伴う部分もある.
腫瘍辺縁部に反応性骨形成
Ki-67陽性率は5-17%、多いところで20%強

HE標本
 

Giant cell tumor (骨巨細胞腫)
・原発性骨腫瘍の3-7%(75-90%長幹骨、7%脊椎)
・基本的に良性だが局所の侵襲性はやや強く、肺に転移することもある(2%)。再発もみられる(25%)。
・20-40代に多く15歳以下では稀。やや女性に多い(男:女=2:3)。
・主訴は疼痛、局所の腫脹、圧痛。
・治療:外科的摘出+放射線照射(放射線治療後に悪性転化する例がある)
・軟骨性骨化により生ずる。頭蓋骨は膜性骨化のため稀だが、頭蓋底部は軟骨性骨化。 蝶形骨、側頭骨に多い。
・頭蓋骨発生の頻度報告: 4/411人、11/2046人

一般的なGCTの画像所見
・比較的境界明瞭な膨脹性発育を呈する多房性の溶骨性病変。骨皮質の菲薄化を伴う。
・硬化縁を伴うことは少ない。
・骨外浸潤を示すことも多い。
・40%でsoap bubble aperence(辺縁でのappositional bone growth)を呈する。
・T2WIでヘモジデリンや仮骨形成による低信号が典型的。
・14%に2次性のaneurysmal bone cystを形成。これによるfluid-fluid levelを見ることがある。

頭蓋底GCT
・20-30代の女性、頭痛や視野、視力の異常で発症することが多い。
・蝶形骨洞発生の方がaggressiveなことが多い。
・側頭骨:中頭蓋窩への浸潤傾向。T2強調画像で低信号が多い。反応性の骨形成やwoven boneを認めることが多い。
・蝶形骨洞:中央に位置し、単純な溶骨性変化が主体で骨の反応性変化に乏しい。T2強調画像での低信号を示す頻度は低い。


主な鑑別診断

側頭骨の場合
・Giant cell reparative granulomas
・軟骨芽細胞腫
・副甲状腺機能亢進症 (褐色腫)

蝶形骨洞の場合
・脊索腫 
・軟骨腫
・軟骨肉腫

参考文献
・Kashiwagi N, et al. MRI and CT findings of the giant cell tumor of the skull. European journal of radiology 2006;58:435-443
・Jane A. Lee, et al. Residents’ Teaching Files Giant cell tumor of the skull. Radiographics 1998;18:1295-1302
・R. Gupta, S.Mohindra et al. Giant cel tumour of the clivus. British Journal of Neurosurgery 2008; 22(3): 447-449

 

 

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Moderator: 萩原 良哉