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第315回東京レントゲンカンファレンス
2009年9月24日
症例2 20歳代 男性
   

神経節細胞腫(左副腎)
ganglioneuroma of the left adrenal gland

 

画像所見

 

腹部CT
左副腎に分葉状腫瘤を認める。
腫瘤は石灰化を認め、遅延相でわずかに造影されている。


 

腹部造影CT門脈相連続画像
腫瘤内部に隔壁様構造物を認め、石灰化を伴っている。わずかに造影効果を認める。


腹部MRI
左副腎の腫瘤はT2WIで淡い高信号、T1WI で低信号を呈している。

 

腹部MRI dynamic study
腫瘤は造影早期相で淡く造影され、遅延相にかけ造影効果の増強を認める。

 

 

 

所見のまとめ
【 CT 】
・左副腎に約3x4cmの分葉状の腫瘤を認める。
・単純CTで低濃度を呈し、内部に隔壁様構造物を認め石灰化を伴っている。 造影遅延相にかけ軽度造影効果の増強を認める。

【 MRI 】
・左副腎の腫瘤はT2WIで淡い高信号、T1WIでin, opposed phaseでともに低信号を呈している。
・Dynamic studyで徐々に造影効果の増強を認める。

⇒以上の所見から、
左副腎の腫瘤の鑑別疾患として
結核、ヒストプラズマ症、寄生虫性嚢胞などが疑われた。
悪性の可能性は考えにくいと思われた。

病理結果
Ganglioneuroma of left adrenal gland
・左副腎腫瘤内に神経節細胞が散在し、末梢神経線維の増生やmyxoid stromaの間質拡大を合併している。
・悪性を示唆する所見はない。

Ganglioneuroma
交感神経節由来の良性の神経原性腫瘍の一つ。
・良性腫瘍といわれていたが、最近では成熟分化した神経芽腫と考えられている。
・発生部位:多くは後縦隔後腹膜 (約40%) に認められ、20-30%が副腎髄質から発生する。
・全年令で認められるが、若年者に主に多い。
・大きさは4-22cm (本症例は3x4cm)。
・症状:多くは無症状偶然指摘される(本症例)
  その他、腹痛、腹部腫瘤触知など。
  *カテコラミン、VIP、男性ホルモンなどの分泌による高血圧、下痢、男性化などの症状を呈することもある。
・免疫染色:S-100陽性が知られている。
・治療:手術

Ganglioneuromaの画像所見
【 CT 】
境界明瞭、卵円形、分葉状で線維化した被膜を有している。
・単純CTで筋肉より均一な低濃度を呈し、造影CTで均一〜軽度不均一に造影されている。
石灰化が20%に認められ点状であることが多い。

【MRI】
T1WIで均一な低信号を呈する。
 T2WIで腫瘍内の粘液基質の含有と相関し、粘液基質が多いと高信号、神経節細胞や線維成分が多いと低信号を呈する。
・造影早期相で造影効果は乏しく、遅延相にかけ徐々に造影効果の増強を認める。

鑑別診断
石灰化
・副腎結核 (→肺の次に副腎に好発、両側が多い)
・副腎血腫 (→慢性期の血腫の辺縁に石灰化を認める)など。

腫瘤内部の低濃度域
ヒストプラズマ症(→欧米に多い、最近は日本でも海外渡航歴と関係なく増加している. 両側副腎に対称性な内部壊死を認める)
・副腎嚢胞 (→造影効果が乏しいため嚢胞性病変と鑑別困難な場合がある)など。

今回の症例のまとめ
・Ganglioneuromaは後腹膜由来の神経原性腫瘍の一つで、副腎からも発生する。
・今回の症例のように、偶然指摘された副腎腫瘤で、造影効果が乏しく、石灰化を伴っている場合は、
  ganglioneuromaを鑑別に入れる必要がある。

参考文献
●European Journal of Radiology 62 (2007)359-370
●知っておきたい泌尿器科のCT・MRI 336-337,342-345.
●RadioGraphics 23 (2003)29-43
●RadioGraphics 22 (2002)911-934

 

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Moderator: 河野 真理