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第317回東京レントゲンカンファレンス
2009年11月26日
症例1 50歳代 男性
   

魚骨の胃壁穿通による膵膿瘍
pancreatic abscess caused by a fishbone which penetrated the pancreatic head through the gastric wall

 


CT所見
・膵頭部に低吸収域
・胃前庭部〜膵頭部に連続する線状の高吸収域 → 異物(線状石灰化影)が膵頭部に刺入して膿瘍形成している疑い。

問診
2週間程度前に宴会で魚を食べた記憶。
痛みの出現はこの時期に一致。

内視鏡
胃角部後壁に粘膜下腫瘍様の隆起あり。
この頂点より膿汁の排出あり。 
鉗子にて内部を探るも異物除去できず。

手術所見
膵頭部に比較的硬い腫瘤あり。
胃と膵に癒着があり、これを剥離して膵頭部を圧迫すると膿と共に長さ5cmの魚骨が膵内より出てきた。

  魚骨の胃前庭部〜膵への穿通による膿瘍形成

 

魚骨の誤飲
・本邦の異物誤飲の中では最も多い。
・誤飲された異物はほとんどが自然排泄されるが、まれに消化管穿孔・穿通を生じる。
・穿孔を生じた異物のうち半数は魚骨。

症状
腹痛、発熱、腹部腫瘤、肛門痛など非特異的な症状が主。

魚骨穿孔の好発部位
食道、小腸、虫垂、盲腸、大腸、肛門など文献により報告にばらつきがある。
腸管に限ると、回腸、横行結腸、S状結腸に有意に多いとされる。
今回のように魚骨により膵にabscessを生じた報告は調べた限りではなかった。

画像診断
[CT]線状高吸収域と周囲脂肪濃度の上昇や膿瘍形成など。
[超音波]魚骨は低エコー内の線状高エコーとして描出。

鑑別診断
・悪性腫瘍(腫瘤形成した場合)
・虫垂炎(回盲部の場合)
・腹膜炎など         
術前診断の正診率は22.3%


 

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Moderator: 依光 美佐子