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第317回東京レントゲンカンファレンス
2009年11月26日
症例2 20歳代 男性
   

悪性末梢神経鞘腫瘍(神経線維腫症 I 型[ NF1 ]に伴う)
malignant peripheral nerve sheath tumor (MPNST)

 



画像のまとめ
・腹直筋に接する腫瘤があり垂直方向に長く存在している。
 頭側では内部に出血・壊死と考える領域を認め、辺縁に強い造影効果を認める。尾側の信号や造影パターンとは異なる。
・この他、皮下や皮膚面に接する境界明瞭な結節や神経の走行に一致した結節が散見される。
・左精巣に異常はない。
既往歴:皮膚科にて 神経線維腫症 I 型 von Recklinghausen病として経過観察中
身体所見:Cafe Au Lait 斑多数あり。

経過
・既往歴と臨床症状、画像所見からMPNSTを考え広範囲切除術施行 (10月)


神経線維腫症 I 型(NF1)von Recklinghausen病

・各種臓器に多彩な病変を生ずる遺伝性疾患
・本邦の罹患率は約40000人と推定
・出生約3000人に1人の割合で生じる。
・常染色体優生遺伝であるが、患者の半数以上は孤発例であり、突然変異により生じる。
・原因遺伝子は17番染色体長腕(17q11.2)に位置し、neurofibromin蛋白の異常を生じる。
・この蛋白は癌遺伝子であるrasの機能を抑制的にコントロールしていると考えられており、
 MPNSTを初めとした悪性腫瘍の合併頻度が高いことが知られている。

【皮膚病変】
  色素斑
   ・Cafe Au Lait斑
   ・雀卵斑様色素斑 など
  神経線維腫
   ・神経線維腫(皮膚神経びまん性
   ・MPNST
  その他の皮膚病変(若年性黄色肉芽腫、グロームス腫瘍)

【神経系の病変】
  脳腫瘍(神経膠腫・星細胞腫など)
  脳神経・脊髄神経の神経線維腫
  UBO(unidentified bright object)

【骨病変】
  背椎変形
  頭蓋骨、顔面骨の欠損 → 脳瘤や髄膜瘤を生じることも

【眼病変】
  虹彩小結節( Lisch nodule )
  神経膠腫( optic glioma )

【その他の病変】
  褐色細胞腫やGIST
赤色:95%
青色:10〜20%
緑色:5%以下

 

神経線維腫症 I 型に合併するMPNST
・もともとあった神経線維腫が悪性転化
・26歳から36歳位での発生
・NF1の1〜10%程度に出現
・MPNSTの50〜60%はNF1
・やや男性に多い(NF1は男性に多い)
・末梢神経に沿う大きな境界明瞭または浸潤性腫瘤(しばしば出血を伴う)
・画像診断:良性神経鞘腫との鑑別は困難
   内部に出血や壊死があり辺縁に結節状の造影
   5cm以上の大きさ、急速増大

point
・大きな病変以外の病変に目を向けよう。
・神経線維腫症 I 型の患者で急速増大する腫瘤を見たらMPNSTの可能性を考える。


 

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Moderator: 本谷 啓太