急性浸潤性真菌性副鼻腔炎
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画像所見
【単純写真】正面像、Waters法
・左鼻副鼻腔の部分的陰影増強/含気低下
【単純CT】
・左鼻腔、左篩骨洞、左上顎洞、左蝶形骨洞に軟部濃度を認める。
骨条件
・左上顎洞から眼窩壁へ一部骨破壊を伴い、眼窩内への炎症の進展を認める。
【MRI:T1WI】表情筋下洞前脂肪層 ・左鼻副鼻腔の炎症は、周囲の脂肪織を置換するように浸潤性変化を認める。 ・内頚動脈のsignal voidに左右差が見られる。 |
【MRI:T2WI】 ・内頚動脈のsignal voidに左右差が見られる。鼻副鼻腔にはT2WI低信号は認められない。 |
【MRI:Gd-T1WI-FS】
・左鼻副鼻腔〜左眼窩〜左内頚動脈→周囲に増強効果がみられる。
診断:急性浸潤性真菌性鼻副鼻腔炎
免疫抑制状態。著しい骨洞壁の破壊なしに、洞外脂肪織へ浸潤。
血管内/血管周囲への浸潤。
鼻内所見で壊死組織。
necrotic mass with fungal infection (mucor)
鑑別:上顎洞癌、前部篩骨洞炎からの眼窩蜂窩織炎
抗真菌剤点滴で加療していたが、入院3週間後、右片麻痺(4/5)を呈した。緊急でMRIを撮像。
神経症状が出現した当日のDWI ・左前脈絡動脈領域の急性期脳梗塞。 |
神経症状が出現した当日のMRA |
神経症状が出現した2日後のT2WI |
真菌が前脈絡動脈に浸潤し、これを閉塞することで、前脈絡動脈領域の脳梗塞を生じた。
入院4週間後、動脈性鼻出血により出血性ショックとなり永眠された。
真菌の血管親和性により、顎動脈より出血したと考えられた。
急性浸潤性真菌性鼻副鼻腔炎
・免疫抑制状態で生じる。
・鼻内所見で壊死を見た場合、真菌性副鼻腔炎を示唆する。浮腫のみで他の疾患と区別が困難なことも多い。
CT/MRI
・骨破壊と炎症性副鼻腔に接した軟部組織への浸潤性変化。頭蓋内合併症の評価。
・周囲軟部組織への浸潤性変化は血管浸潤が強いことを反映し、骨洞壁への破壊なしに、これらを貫く血管に沿って洞外に進展しうる。
・骨侵食は病状が進行してからの所見。
・上顎洞前壁に接した表情筋下の洞前脂肪層、後側壁に接した頬間隙から翼口蓋窩の洞後脂肪層、上壁に接した眼窩内脂肪層への炎症の波及は重要である。
尾尻博也 頭頚部の臨床画像診断学,2005
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