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第325回東京レントゲンカンファレンス
2010年11月25日
症例7 40歳代 女性
    肺吸虫症
paragonimiasis(paragonimus Miyazakii 宮崎肺吸虫)


さらに2回のfollow up CT(初診より3カ月後、5カ月後)が施行された。

翌年2月
 
 
翌年4月

 

【画像所見のまとめ】
・胸膜より連続するようにみえる
・境界は不明瞭で辺縁にGGO(ground glass opacity)を伴う浸潤影
・蛇行したトンネル状の透亮像
・移動性である

【血液検査所見】
・WBC 6900/μl(自動計測による分画 好中球62% 好酸球10.2% 好塩基球 0.7% 単球6.9% リンパ球20.2%) Hb 13.4g/dl Plt 25.5×10*4 ・腫瘍マーカー陰性(CEA・CYFRA・SLX・PRO-GRP)
・クリプトコッカス・アスペルギルス抗原・β-Dグルカン陰性
IgE 753U/ml(<216U/ ml )

【追加問診】
・2年前くらいに姉が買ってきた上海ガニをゆでて食べた記憶がある
・韓国でケジャンを食べた記憶もある

【診断】肺吸虫症 paragonimiasis(paragonimus Miyazakii 宮崎肺吸虫)
・宮崎大学へ血液を郵送し診断された

【肺吸虫症 paragonimiasis】
・日本ではウエステルマン肺吸虫と宮崎肺吸虫
・食歴にモクズガニ、サワガニ、イノシシの生肉【この中に幼虫(メタセルカリア)】
 →不十分な加熱による感染の報告も散見される
・終宿主が哺乳類、代表的な人獣共通寄生虫疾患

【症状】
・胸痛、血痰(検診異常で発見されることも多い)

【検査】
・好酸球やIgEの上昇
・血清や胸水での寄生虫抗体値の上昇→感度・特異度ともに高い
・TBLBやBALでの虫体や虫卵の証明が最も確実だが、陽性率が低い

【治療】
プラジカンテル

画像診断
・胸膜病変として胸膜肥厚、胸水、気胸。肺内病変として結節、浸潤影、空洞性病変が言われてきた。
(Im JG,Whang HY,Kim WS,Han MC,Shim YS,Cho SY. Pleuroplumonary paragonimiasis :radiographic findings in 71 patients .AJR 1992;159:39-43)
・胸膜と連続性をもつ、内部にトンネル様空洞(worm migration tract)を伴う胸膜下結節影・浸潤影が特徴的とされる
(pleuropulmonary paragonimiasis:CT findings in 31 patients AJR;185,616-621 2005)
・経過をみると移動性を示す陰影をみることもあり

【経過】
・プラジカンテル 75mg/kg 3day
・3ヶ月後IgEの低下、画像上も病変は縮小傾向となった

 

まとめ
・画像診断上非特異的な結節影の場合もあるが、胸膜と連続性を持ち、寄生虫が這った痕跡を示唆するトンネル様空洞(虫道 worm migration tract)がみられた場合には肺吸虫症に特徴的である。
・経過をみると移動性陰影を認めることがある
 →このような画像をみたら食歴や抗寄生虫抗体の提出を推奨する。

 

 
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Moderator:中村 仁康