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第333回東京レントゲンカンファレンス
2012年1月26日
症例8 60歳代 男性 : パーキンソンニズムの疑い
    慢性後天性肝脳変性症
chronic acquired hepatocerebral degeneration

 

鑑別疾患 ・肝性脳症
・慢性後天性肝脳変性症
・ビタミン欠乏などの栄養障害
・CO中毒
・HIV脳症
・低血糖脳症
・低酸素脳症
  など

慢性後天性肝脳変性症
慢性肝障害、PVshuntなどにより慢性進行性の神経学的所見(パーキンソンニズム、運動失調、その他の運動障害)をきたす疾患。

病理
・皮質白質境界の線状の海綿状変性。
・Alzheimer typeU星細胞の増加。
・星細胞の核内封入体。
・星細胞の浮腫、軸索、髄鞘の脱落。

画像所見
・T1WIでの淡蒼球から大脳脚の高信号
・淡蒼球内節、黒質網様部を優位としたマンガン沈着を反映。
・線条体、黒質緻密部は免れる傾向がある。

星細胞の腫脹や長期の腫脹に伴う軸索、髄鞘の脱落を反映したT2WI FLAIRでの左右対称性の高信号を中小脳脚、小脳白質、皮質脊髄路、淡蒼球、大脳深部白質、中心前回白質、脳梁に認める。

・中心前回の皮質低信号化。

結語
パーキンソンニズムを呈する症例でびまん性白質病変、錐体路病変を認め、慢性後天性肝脳変性症が鑑別として考慮された貴重な症例を経験した。

参考文献
・J Neurol 256;320-332,2009
・AJNR 26:347-351,2005
・AJNR 29:1612-1621,2008
・AJNR 19:485-487,1998