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第334回東京レントゲンカンファレンス
2012年2月23日
症例6 40歳代 女性 : 顔面の色素斑
    基底細胞母斑症候群
BCNS(Basal Cell Nevus Syndrome)

 

基底細胞母斑症候群:BCNS(Basal Cell Nevus Syndrome)
母斑性基底細胞癌症候群:NBCCS(Nevoid Basal Cell Carcinoma Syndrome)
[Gorlin-Goltz Syndrome ゴーリンゴルツ症候群]

基底細胞母斑症候群:BCNS(Basal Cell Nevus Syndrome) 母斑性基底細胞癌症候群 : NBCCS(Nevoid Basal Cell Carcinoma Syndrome)[Gorlin-Goltz Syndrome ゴーリンゴルツ症候群]

1.概要
外胚葉および中胚葉系の器官に多発性の奇形・異常をきたす常染色体優性遺伝を呈する疾患で、皮膚の多発性基底細胞癌、多発性顎骨嚢胞、骨格形態異常を主徴とする。

2.疫学
日本国内では、2009年全国一時調査が行われ、300人を超える患者が確認された。(厚生労働省難治性疾患克服研究事業)
軽症の症例が気づかれない場合があるため、実際はもっと多いと思われる。

3.原因
PTCH1(Patched1)遺伝子は、1996年に 本症候群の責任遺伝子として同定された。
すでに160以上の変異が報告されており、遺伝子変異によって生じたPTCHタンパクの機能異常により発症する。

4.治療
根本的治療はない。基本的には、対症療法。
過剰な日光曝露やX線照射により基底細胞癌の発症リスクが高まるので、避けることが望ましい。

5.臨床像  
0〜10歳 大頭症、椎骨肋骨異常、手掌足底に小陥凹
2〜3歳 髄芽腫(約5%)、大脳鎌石灰化
10歳前後 顎骨嚢胞、感染を伴い顎骨腫脹
20歳前後 基底細胞癌
卵巣線維腫・心線維腫・横紋筋肉腫など、家系内でも家系ごとでも100種類以上の多様な臨床徴候がみられる。


診断基準(Evansら)
大基準  ➀ 多発性基底細胞癌
 ➁ 歯原性角化嚢胞(組織学的に)/または多発性骨嚢胞
 ➂ 3個以上の掌蹠小陥凹
 ➃ 異所性石灰化:大脳鎌の石灰化
 ➄ 家族歴
小基準  ➀ 先天性骨奇形:二分肋骨、脊椎の二分・楔状・融合など
 ➁ 前頭突出かつ後頭前頭径が97パーセンタイル以上
 ➂ 心線維腫または卵巣線維腫
 ➃ 髄芽腫
 ➄ 腸間膜嚢胞
 ➅ 先天奇形:口唇・口蓋裂/多指症/先天性白内障、小眼球症
※大基準2項目、または大基準1項目+小基準2項目を満たせば本症と診断


硬膜の石灰化
・生理的石灰化:単純撮影で成人の10%弱に認められる。
・髄膜腫:脳腫瘍全体の27%、中年女性に多い、腫瘍内石灰化は20%にみられる。
・Basal cell nevus syndrome:20歳までに患者の90%超に認められる。
・Pseudoxanthoma elasticum(PXE):遺伝性のミネラル(Ca)代謝異常で、全身に石灰化をきたす。

 

参考文献 ・臨床画像 14,(33)793,1998
・前田忠行: 診誤りやすい正・異常の境界画像(脳・頭頚部・脊椎・脊髄),8-9,メジカルビュー社,2000
・GRJ :Nevoid Basal Cell Carcinoma Syndrome
・日皮会誌:116(3),303-310,2006