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第334回東京レントゲンカンファレンス
2012年2月23日
症例1 60歳代 男性
    褐色脂肪腫
hibernoma

 

キー画像    
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 CT  PET/CT  Gd-T1WI (fat-sat)
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 T1WI  T2WI  Gd-T1WI (fat-sat)

 

所見のまとめ・左背部皮下に存在する病変
・筋との境界は明瞭であり、皮下脂肪織内に存在する病変
・境界は明瞭、尾側の辺縁に小病変の集簇
・CT:皮下脂肪と比較して軽度高吸収
・MRI:T1WIで筋と等信号強度内に軽度高信号域、T2WIでは皮下脂肪と比較して高信号
・内部性状はやや不均一
・造影効果は比較的強く、線状の造影増強域を伴う
・FDG-PETでの集積は中等度
背部皮下脂肪織内を中心として発育した富血性のmyxoidな軟部腫瘍



鑑別 ・Lipoma
・Angiolipoma
・Hemangioma
・Liposarcoma

 

経過

・ 外科的摘出術が施行された 2房性になっており、1塊として摘出した 癒着は強くなかった 。



病理結果

・線維組織に仕切られる形で、泡沫状、好酸性の細胞質を有する脂肪細胞の増生巣を認める
・脂肪滴の大きさは種々であり、成熟した大型脂肪細胞の混在も認める
・部位によってはmyxoid changeの顕著な間質に脂肪細胞が散在する領域を認める
・異型細胞や壊死細胞は認めない
褐色脂肪腫の診断


褐色脂肪腫(Hibernoma)・褐色脂肪を由来とした良性腫瘍
・30-40台に多く(全体の6割程度)で、男女差は報告により異なる
・好発部位は褐色脂肪の遺残が生じる部位で、大腿部が多く、他に肩、頸部、腋窩、肩甲骨、胸郭、後腹膜など
・無痛性の可動性がある腫瘤として触れる事が多い
・富血性の特徴を反映して熱感を持つ事もあるが、多くの場合症状を来さない
・大きさは5-10cm程度だが、20cm程度の病変も報告されている
・富血性病変であるので、針生検は推奨されない
・良性腫瘍と考えられ、悪性転化の報告は1例のみ
・摘出が不十分であると局所再発する事がある


画像所見・CT、MRIでは脂肪成分やmyxoidな成分の割合により画像所見が異なる
・単純CTでは境界明瞭で皮下脂肪より軽度高吸収
・T1WIでは皮下脂肪と比較して軽度-中等度低信号 (褐色脂肪の含有による変化と考えられる)
・T2WIでは皮下脂肪と比較して軽度低信号
・STIRやT2 fat-satでは脂肪の抑制が不十分で不均一に描出される
・Diffuseに造影される事が多い
・FDG-PETに付いてはまとまった報告が無いが高集積を伴う報告が多く、褐色脂肪の活動性を反映していると考えられる

 (SUV max: 2.7-26.7)


参考文献・Papathanassiou Z. Imaging of hibernomas: A retrospective study on twelve cases. Clinical Sarcoma Research 2011;1:3.
・Smith CS. False-Positive Findings on 18F-FDG PET/CT: Differentiation of Hibernoma and Malignant Fatty Tumor on the Basis of Fluctuating Standardized Uptake Values. American Journal of Roentgenology 2008;190:1091-6.
・Furlong MA. The morphologic spectrum of hibernoma: a clinicopathologic study of 170 cases. Am J Surg Pathol 2001;25:809-14.

 

 

 

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Moderator:関根 鉄朗