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第334回東京レントゲンカンファレンス
2012年2月23日
症例8 60歳代 男性
    神経核内封入体病
neuronal intranuclear hyaline inclusion disease

 

【主訴】検診受診
【現病歴】当院で施行している検診の一環として頭部MRIが施行された。
【既往歴】約3年前に
ものわすれ、手のしびれを主訴として当院神経内科受診歴あり(保存的に経過観察中)
【血液所見】血算および一般生化学に異常なし
【神経学的所見】軽度
記銘力障害あり、軽度排尿困難、便秘傾向あり

 

MRI所見

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 びまん性大脳萎縮 ・側頭葉内側部の萎縮はむしろ軽度
・小脳脳幹の萎縮も軽度
 
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 白質病変 ・概ね対称性だがやや右優位
・放線冠レベルのみでなくU-fiber領域にも信号変化
・U-fiber領域優位に拡散強調像高信号
 

 

その後の経過-1・検診MRIの診断は「非特異的白質病変と脳萎縮、脳底動脈瘤疑い(キー画像には非提示)で要精査指示
・約1年後に再び「ものわすれ」を主訴に精神科受診。器質的障害有無と動脈瘤フォローをかねてMRI再検が行われた

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T2強調像:ほぼ変化なし(わずかに白質病変拡大?)
 
 初回MRI    1年後
     
拡散強調像:わずかに高信号が増強?
 
 初回MRI    1年後

 

その後の経過-2・1年後MRIで拡散強調像高信号から「ある疾患」を疑われ、直腸粘膜生検が施行された
・粘膜の細胞にユビキチン陽性のエオジン好性核内封入体が認められ、診断確定となった

最終診断:神経核内封入体病 Neuronal Intranuclear Hyaline Inclusion Disease(NIHID)

神経核内封入体病(NIHID)・neuronal intranuclear inclusion disease(NIID)の病名も使用される
・原因不明の稀な神経変性疾患で、孤発例が多いが家族例もみられる
・小児発症から高齢発症まで幅があり、多くは緩徐に進行する
・症状は多岐にわたり、パーキンソニズム、記銘力障害、小脳症状、自律神経障害などが認められる
・核内封入体は神経細胞のみでなく、グリアや筋など全身各所の細胞にみられる
 —直腸粘膜生検で診断可能
 —皮膚生検の報告もある
・画像所見はびまん性の大脳や小脳の萎縮、U-fiber領域を含む白質病変で非特異的とされていた
・最近になって
拡散強調像でU-fiber領域優位に高信号がみられるのが特徴的所見と考えられている
 (英文でのまとまった報告はまだないが、柳下先生の「神経内科疾患の画像診断」 に記載されている)

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Moderator:渡谷 岳行