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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第335回症例症例:呈示
第 335 回 東京レントゲンカンファレンス[2012年4月26日]
症例4 50歳代 男性 
 結核性精巣上体炎・精巣炎
 tuberculosis of epididymis and testicle

 

 本症例の経過

・細菌性精巣上体炎を疑い抗生剤内服開始するも症状の改善なし
・尿培養,クラミジア・トラコマティス(PCR)ともに陰性
・精査目的にて、陰嚢超音波検査及び陰嚢MRI施行

 

 超音波画像所見まとめ

・左精巣上体のソーセージ状びまん性腫大(径54×15×14mm)
・内部の不規則な輝度低下と血流シグナル亢進
・精巣鞘膜腔の液体貯留
・精巣内に散在する斑状低エコー域

 MRI画像所見まとめ

・左陰嚢腫大及び左精巣上体の腫大
・造影T1強調像での精巣上体〜精索の強い増強効果
・精巣内の多発結節:T2強調像で低信号,造影T1強調像で増強効果を示す

MRI画像(T2強調像)

精巣上体の腫大と精巣内の散在性低信号結節
 

MRI画像(T1強調像/造影T1強調像)

T1強調像では淡い高信号.明瞭な増強効果

 

MRI所見(T2強調像・造影T1強調像)

精巣内の低信号結節と精索の増強効果

 

 

 本症例の経過

・その後、陰嚢部の皮膚潰瘍部分から結核菌検出
・画像所見、既往歴とも併せ、結核性精巣上体炎・精巣炎と診断
・イスコチン+リファジン+エブトール+ピラマイド内服開始後徐々に左陰嚢腫大と疼痛は改善傾向を示し、抗結核薬内服開始後3ヶ月でほぼsymptom freeとなった
・肺病変に関しては、呼吸器科対診し活動性乏しいと診断
・現在、特に症状の再発なく経過観察中

本症例の胸部CT(未公開)

両側肺尖部に結核腫と思われる結節・粒状影あり

 

解答:結核性精巣上体炎・精巣炎


 結核性精巣上体炎

結核菌の精路逆行性・尿路逆行性感染に起因する精巣上体炎
肺の初感染巣からの血行性散布と膀胱・精嚢・前立腺結核の合併
・結核患者の7%に合併するとされる1)
・尿からの結核菌検出は困難な場合が多い
・症状:陰嚢の違和感、鈍痛(精子侵襲症との鑑別)
 精巣上体の硬結

1)Reeve HR,Weinerth JL,Peterson LJ(1974) Tuberculosis of epididymis and testicle presenting as hydrocele.Urology 4:329

・逆行性感染のため,下部に所見が多い
・鞘膜、白膜を通じて精巣に炎症が波及した場合、精巣の腫脹に伴って白膜が伸展,強い症状を来す場合もある
・病理
 中心部に乾酪壊死を伴う肉芽腫周囲を、類上皮細胞、ラングハンス型巨細胞、線維芽細胞と線維組織が覆う

・治療:
 抗結核薬投与
 精巣上体もしくは精嚢、精管、前立腺合併摘除術

合併症:精巣上体部の精管狭窄や精巣への炎症波及による男性不妊

 

 結語

・結核性精巣上体炎の1例を経験した
・結核性精巣上体炎は発見が遅れがちであり治療に際しても長期間の投薬を要する
・的確な画像診断と詳細な臨床経過の評価による早期発見・治療が肝要である


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Moderator: 長谷川 大輔