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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第336回症例症例:呈示
第 336 回 東京レントゲンカンファレンス[2012年5月24日]
症例5 50歳代 男性 
 仙骨巨細胞腫
 giant cell tumor of the sacrum

 

 画像所見

 

【骨盤単純写真】

・仙骨の骨破壊
・骨盤内ガスの消失 → 骨盤内の占拠性病変を疑う

 

仙骨より骨外に膨隆する腫瘍? or 骨盤内腫瘍の仙骨浸潤?


 

【骨盤CT】

・仙骨から骨盤内に及ぶ腫瘤
・骨破壊を伴う。腫瘍辺縁に骨皮質が残存している。
・内部は軟部濃度、低吸収域が混在する。

 

仙骨より膨張性の発育を示す腫瘍

【骨盤MRI】
・T1強調像では、均一な低信号、T2強調像でも低信号(骨格筋の信号よりやや高い)
・T2強調像では、内部に嚢胞様の高信号域あり。
・拡散強調像では、充実性部分がやや信号が高い。嚢胞様の領域に信号上昇なし。

【骨盤MRI(造影)】
・不均一な濃染
・ T2強調像で嚢胞様の高信号を示した領域には濃染なし。
➀ T2強調像で低信号示す
➁ 嚢胞変性、または壊死を疑う所見を伴う

 

最終診断:骨巨細胞腫

 


 骨巨細胞腫

・破骨細胞様の多核巨細胞が多数出現する腫瘍
・原発性骨腫瘍の約5%
・長管骨の骨端(特に膝周囲)に多い。
・その他にも橈骨・尺骨、上腕骨、脊椎・仙椎、骨盤骨にも好発。
・全GCTの3%が椎骨に、4%が仙骨に生じる。
・好発年齢は20〜40歳
・増殖速度が速く、再発率が高い
・しばしば肺転移をきたす。

【CT所見】
・骨溶解をきたし、膨張性に発育する腫瘤
・通常は内部に硬化像なし
・嚢胞、新旧の出血、壊死、線維化などの所見が混在している場合が多いが、その時にはそれぞれ特徴的なCT、MRI像を示す。

【MRI所見】
・T1強調像 低〜等信号
・T2強調像 低〜高信号(不均一な場合が多い。)
・二次性のABC componentが約15%に見られる(T2WI高信号、Fluid-fluid level)★
・造影MRI 不均一な濃染を示す。(細胞成分に富んだ部分は、T2強調画像にてやや高い信号を呈し、よく造影される。)
・嚢胞、新旧の出血、壊死、線維化などの所見が混在している場合が多く、それぞれ特徴的なMRI像を示す。

 

 仙骨腫瘍の診断

頻度

metastasis
primary
malignant Benign
chordoma (50 %) giant cell tumor (60 %)
lymphoma (9 %) aneurysmal bone cyst (4 %)
multiple  myeloma (9 %)  
Ewing sarcoma in children (8 %)  
chondrosarcoma
osteosarcoma etc.
osteoblastoma
etc.
*(カッコ内は仙骨悪性腫瘍中の頻度) *(仙骨良性腫瘍中の頻度)

common
less common

 

本症例

 

➀ CT上、骨皮質の保たれた膨張性の発育

metastasis

chordoma

GCT

lymphoma

multiple myeloma

 

 

 

➁ T2強調像で低信号を示す。

metastasis

chordoma

GCT

lymphoma

multiple myeloma

 

 

 

➂ 嚢胞変性、または壊死を疑う所見を伴う。

metastasis

chordoma

GCT

lymphoma

multiple myeloma

 

 

 

参考文献
・Kwon JW et. al: MRI findings of giant cell tumors of the spine. AJR Am J Roentgenol. 2007 Jul;189(1):246-50.
・S. Gerber et. al: Imaging of sacral tumours. Skeletal Radiol (2008) 37:277–289


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Moderator: 鈴木 賢一