膵腺房細胞癌 acinar cell carcinoma of pancreatic body |
画像所見 |
【上腹部ダイナミックCT】
・胃の大弯側に静脈の拡張があり、膵尾部に10cmくらいの腫瘤を認める。
・境界明瞭で周囲を圧排するような増殖を示す。
・脾動脈はencaseされていないが脾静脈は閉塞し、短胃静脈、胃大網静脈が瘤状に拡張している。
・動脈相で辺縁を中心に強く造影されるが徐々にwash outされ、膵実質よりも造影効果は弱い。
・リンパ節腫脹はない。
・肝臓の後区域に動脈相で濃染するhypervascularな結節を認める。
【Slab MIP】
胃大網静脈からSMVへの拡張が見られ、腫瘍には周囲は血管増生が豊富であることがわかる。
Key image | |
鑑別診断 |
徐々に濃染する多血性膵腫瘍
◎solid psudopapillary neoplasm
○acinar cell carcinoma
○内分泌腫瘍
○転移性膵腫瘍
膵体尾部・脾切除+肝部分切除+胆嚢摘出術 |
組織学的には腫瘍細胞は好酸性細胞質を有する腫瘍細胞が腺腔構造を形成し細胞間の血管間質の増生が豊富。 |
診断:acinar cell carcinoma(ACC)(腺房細胞癌)
ACCの画像的な特徴 |
特徴的な画像所見(CT9例,MRI2例)
・exophytic(82%)
・oval or round
・well-marginated(91%)
・膵実質よりは造影効果は弱い
・小さいものは充実性で大きいものは嚢胞を含む
特徴的な所見(15例のCT)
・large(平均5.1cm)
・exophytic
・well-circumscribed
・without appreciable biliary or pancreatic ductal dilatation
→術前’most likely’な診断としてACCを挙げたのは0例 膵管癌(4),内分泌腫瘍(8),IPMNなど嚢胞(4),リンパ腫(1)
MRIが優れている点(4例のMRIとCTの比較)
・辺縁や周囲への進展の評価
・嚢胞の評価
・造影剤が使用できなくても血管の評価が可能
・MRCPでの胆管・膵管の評価
→CTとMRIはほぼ同等の診断能。 一般的にはMRIは肝転移や出血の評価に優れる。
ACCの画像の特徴のまとめ |
・膵外発育
・境界明瞭
・大きい(平均6-7cm)
・動脈相で染まり徐々に濃染(膵実質より弱い)
・膵管、胆管を閉塞させることは少ない
・血管浸潤は少ない
[内分泌腫瘍]
・大きさ 2-4cm
・比較的境界明瞭
・浸潤傾向は少ない
・造影効果 膵実質よりも濃染
・大きい時は悪性のことが多く特に非機能性だとACCと鑑別が困難
[Solid psudopapillary neoplasm]
・大きさ 9cm
・膵外発育性、境界明瞭
・造影効果 辺縁から徐々に染まる
・遠隔臓器転移、リンパ節転移 稀
・出血の有無 よくある
・基本的に良性疾患
・若い女性に多い(20-40歳)
[漿液性嚢胞腫瘍(serous cystic neoplasm)]
・大きさ 平均5cm(microcystの塊)
・浸潤傾向はなく, 境界明瞭
・造影効果 隔壁が動脈相で濃染
・遠隔臓器転移、リンパ節転移 稀
・中心に石灰化があることが多い
・内部はcyst→MRCPで嚢胞状のcystを描出できる
結語 |
・胃静脈瘤の精査で偶然発見されたacinar cell carcinomaの一例を経験した。
・acinar cell carcinomaの術前診断は難しい。
・稀な疾患ではあるが通常の膵癌とは性質の異なるような膵腫瘍を見た場合に鑑別として想起すべき例として呈示させて頂いた。
参考文献
・Tatli S et al. AJR 2005;184;511-519 CT and MRI features of pure acinar cell carcinoma of the pancreas in adults.
・Raman SP et al Abdominal Imaging 2012 Acinar cell carcinoma of the pancreas:computed tomography features-a study of 15 patients
・Hsu MY Clinical Radiology 2010;65;223-229 CT and MRI features of acinar cell carcinoma of the pancreas with pathological correlations
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