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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第338回症例症例:呈示
第 338 回 東京レントゲンカンファレンス[2012年9月27日]
症例7 0歳代 女児 
 下垂体過形成(橋本病による)
 pituitary hyperplasia secondary to Hashimoto's disease


 画像所見のまとめ

・トルコ鞍内から鞍上部に突出する腫瘤
・内部信号および造影増強効果は均一で嚢胞成分は認めない
・下垂体柄の偏位は認めない
・下垂体後葉のT1WI高信号は保たれている

おそらく下垂体前葉の腫大と思われる

 

 鑑別診断

下垂体過形成
下垂体腺腫
・リンパ球性下垂体炎
・頭蓋咽頭腫(エナメル上皮型)


 下垂体過形成と腺腫

・小児の下垂体は6mmが正常上限
・両者の鑑別は一般的に難しい
・下垂体腺腫では下垂体柄の偏位や左右差、不均一な造影効果が見られることがある
・下垂体過形成の原因
 ─甲状腺機能低下症
 ─アジソン病

 

小児の下垂体腺腫(手術例)
・中学・高校生に多く、プロラクチノーマが多い
・11歳以下ではACTH産生腺腫が多い
・非機能性下垂体腺腫は小児では稀

 

 検査所見

Free T3 1.8 pg/mL(2.2-4.2)
Free T4 0.18 ng/dL(0.7-1.8)
TSH 1497.03 μIU/mL(0.3-4.3)
   
プロラクチン 130.92 ng/mL(1.2-12)
GH 16.6 ng/mL(0.28-1.64)
ACTH 16.3 pg/mL (7.2-63.3)
FSH 6.27 mIU/mL

 

甲状腺機能低下症
抗サイログロブリン抗体 ↑
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体 ↑
原因として橋本病

甲状腺ホルモン補充療法


速やかに甲状腺ホルモンは正常化
・下垂体の腫大もたった1ヶ月で改善
・診断的治療

診断
下垂体過形成 : pituitary hyperplasia 
(原因として橋本病による甲状腺機能低下症)

 

 甲状腺機能低下症による下垂体過形成

・甲状腺機能低下症の25-81%にみられる
・特にTSH 50 μIU/mL以上の症例では高率(70%)
・治療は甲状腺ホルモン補充療法が奏効
・投与後1〜4ヶ月で下垂体の腫大は改善

 

参考文献
・The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 1994, 79(4): 1135-1140
・Endocrine Reviews 1996,17(6):610-638
・Endocrine practice 2006,12(1):29-34
・J Clin Endocrinol Metabol 1983,57:283–287

・J Neurosurg 2005, 102: 413–416
・Pediatric Radiology 2009, 39(2):164-167

 

 


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Moderator: 原田 明典