casetop
東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第339回症例症例:呈示
第 339 回 東京レントゲンカンファレンス[2012年10月25日]
症例6 40歳代 女性
中枢神経ループス
CNS lupus 

(抗核抗体陽性、他の診断基準も満たし確定)

 


 画像所見のまとめ

1.尾状核、被殻、淡蒼球、視床、白質、髄質静脈に沿った石灰化
 一部表面効果によりT1強調高信号。濃度の高い石灰化はT1強調T2強調像とも低信号。
2.ADCの低下を伴う拡散強調像の異常高信号は認めていない。
3.脳溝の軽度開大
4.出血なし。

 

 中枢神経ループス(CNS lupus)

・抗原抗体複合体沈着に伴う局所の血管炎
・抗リン脂質抗体、血小板、及び血管壁の相互影響に伴う二次性の血栓症
・抗原抗体反応に伴うび慢性の神経機能障害

A A Raymond et al. Burlina et al. Lupus(1996)5:123-128
Kenichi Kashihara et al. AJNR (February 1998) 19:284-286
J.E. Jenings et al . Neuroradiology (2004 )46:15-21
Elieser Avrahami et al. J Neurol(1994)241:381-4
G Scotti et al. J Comput Assist Tomogr. (1985)vol9.No4:790-792

 

 画像所見

MRI:ほぼ正常34%
T2強調像高信号60%
脳萎縮43%、脳梗塞21%、出血5%
拡散強調像の異常信号18%
T1強調高信号(石灰化の表面効果?頻度不明)
CT:石灰化30%

機序は正確にはわかっていない。
免疫学的血管損傷〜微小梗塞〜異栄養性石灰化
前段階として炎症に伴う壊死があり2次的に異栄養性石灰化をきたす?

好発部位
両側対称性:淡蒼球100%、尾状核頭部、視床、半卵円中心、小脳
石灰化の有無程度と神経症状とは関連なし。

非特異的な所見ですが今回は頭蓋内にdenseな石灰化をきたしうる病変の再確認目的で症例呈示。

 

 頭蓋内石灰化の鑑別

1.加齢性変化(40<)
2.内分泌疾患:
 副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、偽性偽性副甲状腺機能低下症
 副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症
3.代謝性:ミトコンドリア病Fahr病等
4.先天性・developmental(Fabry病:前回TRC)
5.炎症感染:SLE,HIV関連病変等
6.外傷
7.中毒:一酸化炭素、鉛等

 

 頭蓋内石灰化の鑑別とコメント

本例では副甲状腺、甲状腺機能が後に正常範囲であることが判明、Idiopathic intracranial calcification(Fahr`s syndrome)の範疇に入るかもしれないが結果的に原疾患(SLE)が臨床的に確定。原疾患に高率に起こりうる石灰化例として呈示した。
なお狭義のFahr病については、家族性であり、画像上基底核レベルの萎縮などを指摘する報告もある。

臨床症状の少ない初見例では1つに絞ることは困難だが、SLEやミトコンドリア病は、強い頭蓋内石灰化を来しうる疾患として鑑別にあげられる事を意図して出題した。

 

参考症例:最近経験した、類似の石灰化を呈する病変で本症例はミトコンドリア病。


 


◀ 症例提示へ戻る 画像をまとめて見る…PDF
Moderator: 林 高樹