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第 349 回 東京レントゲンカンファレンス[2014年1月23日]
症例7 50歳代 男性 : 呼吸苦、下腿浮腫
食道癌、心臓転移
esophageal cancer, cardiac metastasis

 

 鑑別診断

[良性心臓腫瘍]:原発性心臓腫瘍の約80% [悪性心臓腫瘍]
 粘液腫
 脂肪腫
 乳頭線維性弾性腫
 横紋筋腫
 線維腫
 褐色細胞腫
 血管腫
 血管肉腫
 横紋筋肉腫
 線維肉腫
 骨肉腫
 平滑筋肉腫
 脂肪肉腫
 悪性リンパ腫
 二次性心臓腫瘍 直接浸潤 経静脈浸潤 転移


 二次性心臓腫瘍

・決して稀な病態ではなく、癌患者の剖検例の7.1%、全剖検例の2.3%で発見されると言われている。
・原発性腫瘍の20〜40倍でみられる。
・原発巣として頻度が高いのは、肺癌、血液悪性腫瘍(白血病、悪性リンパ腫)、乳癌、悪性黒色腫とされているが、食道癌はこれに続く数であるとされている。
・無症状であることが多く、生存中に診断されることは少ない。
➀隣接臓器からの直接浸潤
・肺腫瘍や縦隔腫瘍は心膜および心臓に直接浸潤を来す。
➁経静脈的進展
・腎癌や副腎癌、肝癌から生じる腫瘍は経下大静脈的に右房に進展する。
・原発性胸腺癌は経上大静脈的に右房に進展する。
➂転移
・心臓に転移する代表的な悪性腫瘍は悪性黒色腫、白血病、悪性リンパ腫である。
・なかでも悪性黒色腫は剖検例の64%に心臓転移が認められている。

 

 その他の代表的な心臓腫瘍

■粘液腫
・原発性心臓腫瘍の約25%をしめる。
・発生部位は左房が75%、右房が20%。
・画像所見はムコ多糖の豊富な基質を反映し、CT上は低吸収として描出され、石灰化がしばしば認められる。
・MRIでは出血、壊死を反映し、内部は不均一でさまざまな信号を呈しうるが、T2強調像での著明な高信号が特徴的である。

■脂肪腫
・成人において粘液腫の次に多い良性心臓腫瘍。
・右房、または心房中隔の心内膜面から生じ、広く結合している。
・脂肪濃度を呈する。
・造影増強効果はみられない。

■横紋筋腫
・小児においては最も頻度の高い心臓腫瘍で、約40%を占める。
・1/3〜1/2は結節性硬化症患者に認められる。
・心筋内に発生することが特徴で左室と右室の頻度に差はない。

■血管肉腫
・成人で最も多い原発性悪性心臓腫瘍で、全体の1/3を占める。
・心房中隔から発生し、右房に腫瘤を形成することが多い。
・T1強調像で不均一な信号のなかに出血と思われる局所的な高信号が散在する。T2強調像では不均一な高信号を呈する。造影後は高信号を呈する。

■悪性リンパ腫
・2次性非ホジキンリンパ腫が多く、原発性の頻度は低い。
・原発性は主に免疫力の低下した患者に認められ、ほぼすべての原発性心臓リンパ腫はB細胞リンパ腫である。
・右心系、特に右房から生じることが多い。
・大量の心嚢水を合併することが多い。
・出血や石灰化は稀で、肉腫と比べると壊死の頻度が軽い。

 

 まとめ

二次性心臓腫瘍は原発性腫瘍よりも数十倍の頻度でみられるため、転移の可能性を常に考えるべきである。



参考文献
・Int.J.Clin. Oncol. 13:369-342,2008
・J Clin Oncol 1988. 18195–201.201.
・Clin Pathol. 2007 January; 60(1): 27–34.
・Radiographics, May 2002, Vol 22, Issue 3
・Korean J Radiol. 2009 Mar-Apr; 10(2): 164–175
・Radiographics. 19 (6): 1421-34.
・心臓血管疾患のMDCTとMRI
・画像診断 Vol.30,No.1, 2010

 


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