肝未分化肉腫 undifferentiated embryonal sarcoma of the liver |
画像所見のまとめ |
【US】
・無エコーなcystic partを伴う境界明瞭な充実性腫瘍
・充実部分は肝実質より高輝度
【CT/MRI】
・隔壁の厚い多房性嚢胞性腫瘤
・造影効果を伴う結節部分あり
・一部の嚢胞は脂肪抑制T1WI高信号で出血成分疑い
・由来臓器として、肝以外にも腹膜由来などの可能性も考えられた
右横隔膜下腫瘍摘出術 |
・肝右葉と広範囲に接していた
・一部で横隔膜と癒着しており横隔膜も合併切除
・術中所見からも発生部位は不明
・多数の嚢胞を伴うが
充実部分を主体とする境界明瞭な腫瘍であった。
・CT/MRIからイメージされた多房性嚢胞性腫瘤ではなく、
肉眼所見はUS像に近かった。
・腫瘍辺縁に全周性に肝組織あり → 肝由来
・紡錘〜楕円形細胞から成る
・背景に豊富な粘液間質
・上皮性・間葉系・筋系のマーカーが陽性
・組織球系α-1-antitripsin陽性
・Kit-67標識率30-40%
病理診断:肝未分化肉腫 Undifferentiated embryonal sarcoma of the liver
肝未分化肉腫 |
・1978年に提唱された肝間葉系由来の悪性腫瘍
・小児の原発性肝腫瘍のうち肝芽腫、肝細胞癌についで3番目の頻度(小児原発性肝腫瘍の約10%)
・成人の報告例も散見される
・AFPなど各種腫瘍マーカーは陰性
・一般的な治療は腫瘍切除+化学療法(+放射線療法)だが、予後不良とされている
肝未分化肉腫の画像所見 |
USでは多数の嚢胞形成を伴う充実性腫瘤であるが、MRI T2WIでは隔壁の厚い多房性嚢胞性腫瘤のように見える。
本症例と同様で、肉眼所見はUS像に近く、多数の嚢胞を伴う充実性腫瘤であった。
嚢胞形成が目立たず、大部分が充実部分からなる未分化肉腫。
充実部分は豊富な粘液間質を反映して、漸増性の増強効果を呈する。
画像所見のポイント |
・右葉に多い
・USでは充実成分主体、CT/MRIでは嚢胞成分主体に見える
・嚢胞変性・壊死を伴うことが多い
・嚢胞内部に出血成分を認めることがある
・粘液間質を反映し、dynamic studyで漸増性増強効果を確認できることがある
鑑別診断 |
・Hydatid cyst
・Metastatic liver tumor
・Biliary cystadenocarcinoma
結語 |
成人に発生した肝未分化肉腫の一例を経験した。
充実部分と嚢胞部分が混在しており、USとCT/MRIで所見に解離があることが、肝未分化肉腫を疑う一助となる。
参考文献
・Mitchell H. Crider et al. Undifferentiated (Embryonal) Sarcoma of the Liver. RadioGraphics. 2009; 29:1665–1668
・Michael Kim, et al. Undifferentiated Embryonal Sarcoma of the Liver. AJR. 2008; 190:W261–W262
・Sodhi KS, et al. Paradoxical hepatic tumor: Undifferentiated embryonal sarcoma of the liver. Indian J Radiol Imaging. 2010 Feb;20(1):69-71.
・Buetow PC, et al. Undifferentiated (embryonal) sarcoma of the liver: pathologic basis of imaging findings in 28 cases. Radiology. 1997 Jun;203(3):779-83
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