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第 350 回 東京レントゲンカンファレンス[2014年2月27日]
症例2 60歳代 女性 : 複視
形質細胞腫
plasmacytoma

 

 多発性骨髄腫/形質細胞腫

[臨床的特徴]
・骨髄で形質細胞が単クローン性に増殖
・60歳代に好発、やや男性に多い
・複数の骨に病変→多発性骨髄腫。1つの骨に限局→形質細胞腫(骨髄腫の5〜10%)
・約3/4の症例が2〜4年の経過で多発性骨髄腫に移行

[診断基準と病型分類]
International Myeloma Working Group 診断基準

病型

M蛋白

骨髄形質細胞

臓器障害

腫瘤形成

末梢血形質細胞

多発性骨髄腫

+/−

形質細胞腫

+/−

+(骨1ヶ所)

髄外形質細胞腫

+/−

+(骨以外)

形質細胞白血病

+/−

+/−

+/−

>2000/μL

臓器障害*:貧血、過粘調症候群、易感染、腎機能低下、高カルシウム血症 etc.

・病型により治療・予後が異なる。
・形質細胞腫は10年生存率40〜50%。髄外形質細胞腫(70%)に次いで予後は良い。ともに放射線治療の適応。

[画像的特徴]
・好発部位:椎体骨、頭蓋骨、骨盤骨、胸骨etc
・画像所見:CTで骨硬化を伴わない融解像。T2WIで高信号*、T1WIで低信号、造影効果(+)
*T2WIの高信号は、“著明”ではない。

[提示症例のまとめ]
・60歳台の女性
・斜台部の骨を置換する腫瘤
・T2WIで軽度高信号、均一な造影効果を認める

斜台部腫瘍の鑑別診断
脊索腫
軟骨腫/軟骨肉腫
下垂体腺腫
・形質細胞腫/多発性骨髄腫
・髄膜腫
・鼻咽頭腫瘍の斜台浸潤
・転移性腫瘍

脊索腫(chordoma)
・胎生期の脊索遺残から発生
・発生部位:斜台部 40%、仙尾部 40〜50%、脊椎 15%
・MRI:分葉状、T2WIで著明な高信号(ゼラチン成分を反映)、T1WIで低信号、造影効果は多彩(あまり強くない)
・CT:50%程度で石灰化(+)
・軟骨腫/軟骨肉腫との鑑別はしばしば困難

下垂体腺腫
・下垂体腺腫は通常は抵抗が少ない上方に進展するが、稀に下方の骨へ浸潤することがある。
・正常下垂体は同定できないことが多い。

補足
斜台病変の他に歯突起にも小さな染まりが疑われるが病理は不明であり、骨髄穿刺では腫瘍細胞腫は認められなかったため現時点では形質細胞腫と診断し、治療中。今後、歯突起病変の増大や他部位に病変が出現し、多発性骨髄腫に移行する可能性も考えられる。

 


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