大脳膠腫症 gliomatosis cerebri |
画像所見まとめ |
来院時 頭部単純CT |
|
来院後5日目 頭部造影MRI |
T2WI/FLAIR/ADC map/Gd造影 |
(CT)
・頭頂葉、側頭葉、前頭葉に境界不明瞭な淡い低吸収域。
・分布はランダムで両側性。
(MRI)
・両側前頭葉白質、海馬領域、脳梁、右視床にびまん性のT2/FLAIR高信号域。
・拡散制限なし。
・右頭頂葉に13mmのリング状増強病変あり。
解答:glioblastomaへの悪性転化を伴うgliomatosis cerebri
Gliomatosis cerebriの鑑別疾患 |
・未熟奇形腫
・成熟嚢胞性奇形腫
・粘液性嚢胞腺腫/腺癌
■ 感染症
■ 脱髄性疾患 ■動脈硬化性疾患 |
■ 腫瘍性病変 ■ 血管炎 ■ 代謝性疾患 |
・造影MRIで腫瘤像あり、開頭生検施行。 → 術中迅速病理でglioblastomaの診断
・造影増強病変を周囲の白質も含めて摘出した。
病理(ミクロ) |
Diffuse astrocytoma相当の成分中にglioblastomaを伴った組織像 |
Glioblastomaの組織像 | Diffuse astrocytoma(gradeU) | ||
・壊死巣周囲の腫瘍細胞の柵状配列
・異型グリア細胞の密な増殖 |
・微小血管増生 | ・軽度異型を示すグリア細胞の浸潤 ・既存の組織の破壊は見られない |
診断:gliomatosis cerebri with a focus of malignant transformation
臨床経過 |
・術後放射線化学療法(WBRT+TMZ)施行
・術後7ヶ月までは頭部MRIにて明らかな増悪傾向なし
・術後8ヶ月のMRIで左側頭葉内側に増強病変が出現。サイバーナイフを施行するが病変拡大。
・その後は積極的治療はしない方針となった。
大脳膠腫症(gliomatosis cerebri) |
(基本的特徴)
・腫瘍性神経膠細胞が大脳の三葉以上にわたってびまん性に浸潤する神経膠腫である。
・脳梁・視床間橋を介して対側にも進展。
・脳の白質神経線維の走行に沿って浸潤する傾向あり → 既存の脳構造は比較的保たれる。
・脳腫瘍WHO分類:gradeU〜Vに相当。
・予後不良:1年生存率50%、3年生存率25%
●MRI所見
・大脳白質主体にT2WI・FLAIRで高信号
・T1WIでは低〜等信号
・拡散制限はまれ
・通常はGd増強効果なし ※まれに斑状の増強効果を示し、腫瘍の悪性化を示唆する所見との報告あり。
●CT所見
・非対称性の低吸収域を認めることもあるが、多くは不明瞭
・腫瘍拡大にともない皮髄境界が不明瞭化する
・通常は造影増強効果なし
(分類)
●Gross Pathology(肉眼所見)による分類
Type 1:既存脳構造を破壊することなく拡大するびまん性病変
Type 2:びまん性病変に加えて腫瘤性病変を認める
Type2はType1に比べて予後不良であり、病理学的にもType2は悪性度が高い傾向にある。
今回の症例では
・両側大脳白質のびまん性浸潤
・右前頭葉の腫瘤形成
を認め、Type 2と考えられた。
まとめ |
● 白質主体のびまん性病変を伴う増強腫瘤性病変の鑑別としてgliomatosis cerebriを考慮することが必要と考えた。
参考文献
・ Osborn Anne G. et al.:Diagnostic imaging second edition. 24-27,2009
・ 青木 茂樹 他: よくわかる脳MRI 第3版 64-65, 2013
・ Park S. et al.: Gliomatosis cerebri: clinicopathologic study of 33cases and comparison of mass forming and diffuse types. Clin. Neuropatho 28: 73-82. 2009
・ Chen S. et al.: Gliomatosis cerebri: clinical characteristics, management,and outcomes. J Neurooncol 112: 267–275. 2013
・ Inoue T. et al.: Prognostic factors for patients with gliomatosis cerebri: retrospective analysis of 17 consecutive cases. Neurosurg Rev 34:197–208. 2011
◀ 症例提示へ戻る | 画像をまとめて見る…PDF |