未熟奇形腫 mature cystic teratoma |
画像所見まとめ |
In-phase/out-of-phase |
In-phase/out-of-phase | fsT2WI |
・腫瘤内に脂肪成分が点在 |
・右卵巣は正常所見 |
・下腹部〜骨盤を占拠する巨大な多房性嚢胞性腫瘤(最大径 約190mm)
・腫瘤内部には造影増強される充実成分を伴う
・in-phaseに比してout-of-phaseで信号低下を示す脂肪成分が在散
・右卵巣は正常所見
鑑別診断 |
・未熟奇形腫
・成熟嚢胞性奇形腫
・粘液性嚢胞腺腫/腺癌
【追加検査】CT | ||
粗大な石灰化巣が散在 |
腫瘍マーカー | |
CEA 3.7 |
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術前診断:未熟奇形腫
→ 左付属器切除術が施行された。
左付属器切除術:病理所見 |
・多数の嚢胞と黄色調の充実成分 ↓ |
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開腹時、腫瘍は既に破裂 | Immature teratoma (G1) |
Answer 未熟奇形腫 (G1)
未熟奇形腫:総論 |
・成熟嚢胞性奇形腫と同様、三胚葉由来の組織から構成される卵巣奇形腫。
・病理学的に未熟成分や胎児性成分を含む。
・若年者(〜20歳代)に多い。
・未熟組織の割合によりgrade 1〜3に分類され、再発の危険性はこのgradeと相関する。
(再発率…grade1:18%, grade 2:37%, grade 3:70%)
未熟奇形腫の分化度分類(Grading) |
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Grade 0: |
すべての成分が成熟した組織よりなる(=成熟嚢胞奇形腫) |
Grade 1: |
未熟組織が少量みられ、成熟組織と混在する。核分裂像は少ない。 |
Grade 2: |
未熟な成分が中等量みられ、核分裂がかなりみられる。 |
Grade 3: |
未熟組織と未熟神経上皮が広範囲にみられる。 |
【未熟奇形腫:臨床病理学的分類】 | ||||
良性腫瘍 | 境界悪性腫瘍 | 悪性腫瘍 | ||
表層上皮性・ 間質性腫瘍 |
漿液性腺腫 | 漿液性境界悪性腫瘍 | 漿液性腺癌 | 未分化卵巣肉腫 |
粘液性腺腫 | 粘液性境界悪性腫瘍 | 粘液性腺癌 | 悪性ブレンナー腫瘍 | |
類内膜腺腫 | 類内膜境界悪性腫瘍 | 類内膜腺癌 | 移行上皮癌 | |
明細胞腺腫 | 明細胞境界悪性腫瘍 | 明細胞腺癌 | 未分化癌 | |
腺線維腫 |
境界悪性腺線維腫 | 腺癌線維腫 | ||
漿液性表在性乳頭腫 | 漿液性表在性境界悪性腫瘍 | 癌肉腫 | ||
ブレンナー腫瘍 | 境界悪性ブレンナー腫瘍 | 腺肉腫 | ||
性索間質性 | 莢膜細胞腫 | 顆粒膜細胞腫 | 線維肉腫 | |
線維腫 | セルトリ・間質細胞腫瘍(中分化型) | セルトリ・間質細胞腫瘍(低分化型) | ||
硬化性間質性腫瘍 | ステロイド細胞腫瘍 | |||
セルトリ・間質細胞腫瘍(高分化型) | ギナンドロブラストーマ | |||
ライデッヒ細胞腫 | ||||
輪状細管を伴う性索腫瘍 | ||||
胚細胞腫瘍 | 成熟嚢胞性奇形腫 | 未熟奇形腫(G1, G2) | ディスジャーミノーマ | 悪性転化を伴う成熟嚢胞性奇形腫 |
成熟充実性奇形腫 | カルチノイド | 卵黄嚢腫瘍 | ||
卵巣甲状腺腫 | 胎芽性癌 | 未熟奇形腫(G3) | ||
多胎芽腫 | ||||
絨毛癌 | ||||
その他 | 腺腫様腫瘍 | 性腺芽腫(純粋型) | 小細胞癌 | |
大細胞神経内分泌癌 | ||||
肝様癌 |
Grade 1〜2:境界悪性 Grade 3:悪性
未熟奇形腫:画像的特徴 |
・充実部分と嚢胞部分が混在
・通常、成熟嚢胞性奇形腫より大きい(発見時平均サイズ: 成熟 4cm, 未熟17-25cm)
・石灰化・脂肪組織がまき散らされたように点在
成熟嚢胞性奇形腫の脂肪成分=皮脂腺の分泌物
未熟奇形腫の脂肪成分=点状の皮下脂肪織
最近のトピック |
•2014年1月にFIGO進行期分類が改訂
•大まかな変更点:IC期が細分化、IIC期が削除、IIIC期の一部がIIIA期に、IV期が細分化
【FIGO分類(2014年版)】
IC期がIC1〜IC3に細分化
・IC1 術操作による被膜破綻
・IC2 術前に自然被膜破綻/卵巣表面に腫瘍が露出
・IC3 腹水細胞診+
IIC期が削除
・IIC 腹水細胞診は基準から外れた
IIIC期の一部がIIIA期に
・後腹膜リンパ節のみへの転移はIIIA1期へ
IV期が細分化
・IVA 胸水細胞診+
・IVB その他の遠隔転移
まとめ |
•付属器腫瘍を疑った場合、微量脂肪成分の確認を忘れずに。
•FIGO分類が改訂されました。
参考文献
・日本婦人科腫瘍学会 (編). 胚細胞性腫瘍 卵巣がん治療ガイドライン2010年版 127-129
・日本婦人科腫瘍学会・日本病理学会 (編). 卵巣腫瘍取扱い規約(第2版) 42, 2009
・岡田博史ほか. 成熟嚢胞性奇形腫 画像診断 vol33 No6 622-632 2013
・Jaime Prat. Staging Classification for Cancer of the ovary, fallopian tube, and peritoneum. International Journal of Gynecology and Obsterics, 124, 1-5, 2014
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