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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第350回症例症例:呈示
第 350 回 東京レントゲンカンファレンス[2014年2月27日]
症例6 20歳代 女性
未熟奇形腫
mature cystic teratoma

 

画像所見まとめ
 
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In-phase/out-of-phase
   
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In-phase/out-of-phase

fsT2WI

・腫瘤内に脂肪成分が点在

・右卵巣は正常所見

・下腹部〜骨盤を占拠する巨大な多房性嚢胞性腫瘤(最大径 約190mm)
・腫瘤内部には造影増強される充実成分を伴う
・in-phaseに比してout-of-phaseで信号低下を示す脂肪成分が在散
・右卵巣は正常所見

 

鑑別診断

・未熟奇形腫
・成熟嚢胞性奇形腫
・粘液性嚢胞腺腫/腺癌

【追加検査】CT    

粗大な石灰化巣が散在

  腫瘍マーカー
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CEA  3.7
AFP  146↑
CA19-9 28
CA125  47↑

     

術前診断:未熟奇形腫
 → 左付属器切除術が施行された。

 

左付属器切除術:病理所見
     
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・多数の嚢胞と黄色調の充実成分
・充実性部分には成熟したteratoma成分と未熟な部分が混在
・未熟部分としては脂肪・軟骨・骨・腎臓など間葉系組織がほとんどで、上皮組織の未熟部分はほとんど見られない。成熟細胞の悪性化なし

開腹時、腫瘍は既に破裂   Immature teratoma (G1)


Answer 未熟奇形腫 (G1)


未熟奇形腫:総論

・成熟嚢胞性奇形腫と同様、三胚葉由来の組織から構成される卵巣奇形腫。
・病理学的に未熟成分胎児性成分を含む。
若年者(〜20歳代)に多い。
未熟組織の割合によりgrade 1〜3に分類され、再発の危険性はこのgradeと相関する。
(再発率…grade1:18%, grade 2:37%, grade 3:70%)

未熟奇形腫の分化度分類(Grading)

Grade 0:

すべての成分が成熟した組織よりなる(=成熟嚢胞奇形腫

Grade 1:

未熟組織が少量みられ、成熟組織と混在する。核分裂像は少ない。
未熟な神経上皮成分は、標本あたり低倍率(対物x4)で1視野を超えない。

Grade 2:

未熟な成分が中等量みられ、核分裂がかなりみられる。
未熟な神経上皮成分は、標本あたり低倍率(対物x4)で3視野を超えない。

Grade 3:

未熟組織と未熟神経上皮が広範囲にみられる。
未熟な神経上皮成分は、標本あたり低倍率(対物x4)で4視野以上存在する。

 

【未熟奇形腫:臨床病理学的分類】
良性腫瘍 境界悪性腫瘍 悪性腫瘍
表層上皮性・
間質性腫瘍
漿液性腺腫 漿液性境界悪性腫瘍 漿液性腺癌 未分化卵巣肉腫
粘液性腺腫 粘液性境界悪性腫瘍 粘液性腺癌 悪性ブレンナー腫瘍
類内膜腺腫 類内膜境界悪性腫瘍 類内膜腺癌 移行上皮癌
明細胞腺腫 明細胞境界悪性腫瘍 明細胞腺癌 未分化癌

腺線維腫

境界悪性腺線維腫 腺癌線維腫
漿液性表在性乳頭腫 漿液性表在性境界悪性腫瘍 癌肉腫
ブレンナー腫瘍 境界悪性ブレンナー腫瘍 腺肉腫
性索間質性 莢膜細胞腫 顆粒膜細胞腫 線維肉腫
線維腫 セルトリ・間質細胞腫瘍(中分化型) セルトリ・間質細胞腫瘍(低分化型)
硬化性間質性腫瘍 ステロイド細胞腫瘍
セルトリ・間質細胞腫瘍(高分化型) ギナンドロブラストーマ
ライデッヒ細胞腫
輪状細管を伴う性索腫瘍
胚細胞腫瘍 成熟嚢胞性奇形腫 未熟奇形腫(G1, G2) ディスジャーミノーマ 悪性転化を伴う成熟嚢胞性奇形腫
成熟充実性奇形腫 カルチノイド 卵黄嚢腫瘍
卵巣甲状腺腫 胎芽性癌 未熟奇形腫(G3)
多胎芽腫
絨毛癌
その他 腺腫様腫瘍 性腺芽腫(純粋型) 小細胞癌
大細胞神経内分泌癌
肝様癌

Grade 1〜2:境界悪性    Grade 3:悪性 

 

未熟奇形腫:画像的特徴

・充実部分と嚢胞部分が混在
・通常、成熟嚢胞性奇形腫より大きい(発見時平均サイズ: 成熟 4cm, 未熟17-25cm
・石灰化・脂肪組織がまき散らされたように点在
  成熟嚢胞性奇形腫の脂肪成分=皮脂腺の分泌物
  未熟奇形腫の脂肪成分=点状の皮下脂肪織

 

最近のトピック

•2014年1月にFIGO進行期分類が改訂
•大まかな変更点:IC期が細分化、IIC期が削除、IIIC期の一部がIIIA期に、IV期が細分化

【FIGO分類(2014年版)】
IC期がIC1〜IC3に細分化
・IC1 術操作による被膜破綻
・IC2 術前に自然被膜破綻/卵巣表面に腫瘍が露出
・IC3 腹水細胞診+

IIC期が削除
・IIC 腹水細胞診は基準から外れた

IIIC期の一部がIIIA期に
・後腹膜リンパ節のみへの転移はIIIA1期へ

IV期が細分化
・IVA 胸水細胞診+
・IVB その他の遠隔転移

 

まとめ

•付属器腫瘍を疑った場合、微量脂肪成分の確認を忘れずに。
•FIGO分類が改訂されました。

参考文献
・日本婦人科腫瘍学会 (編). 胚細胞性腫瘍 卵巣がん治療ガイドライン2010年版 127-129
・日本婦人科腫瘍学会・日本病理学会 (編). 卵巣腫瘍取扱い規約(第2版) 42, 2009
・岡田博史ほか. 成熟嚢胞性奇形腫 画像診断 vol33 No6 622-632 2013
・Jaime Prat. Staging Classification for Cancer of the ovary, fallopian tube, and peritoneum. International Journal of Gynecology and Obsterics, 124, 1-5, 2014

 

 

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Moderator: 渡邊 貴史