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第 351 回 東京レントゲンカンファレンス[2014年4月24日]
症例1 30歳代 男性 : 脳腫瘤精査目的
脳嚢虫症
neurocysticercosis

 

 鑑別診断

・転移性脳腫瘍(多発)
・脳膿瘍
・原発性脳腫瘍 (星細胞腫・血管芽細胞腫・膠芽腫…)
・寄生虫疾患(脳嚢虫症)

 

 Neurocysticercosis

・Neurocysticercosis(NCC)はアフリカ、インド、中国、韓国、その他東南アジア各国に広く蔓延している
 重要な寄生虫感染症であり、遅発性てんかんの最も多い原因となっている。
・NCCは有鉤条虫の虫卵を誤嚥したヒトの神経系組織の中で幼虫(嚢虫)が発育して引き起こされる。
 ヒトは終宿主および中間宿主、ブタは中間宿主である。
・NCCは脳実質内、脳室内(10〜21%)、くも膜下腔(3.6%)、脊髄(1%未満)、眼窩の順に多い。

【感染経路】
豚に寄生した有鉤嚢虫を人が摂取した場合、小腸内で約3か月で成虫となり、有鉤条虫症を生じる。
人から排出された虫卵に汚染された食物・水を経口摂取した場合もしくは自家感染した場合に、小腸内で孵化した六鉤幼虫が小腸壁に侵入し、血流あるいはリンパ流にのって全身の筋肉や脳に達し、脳内・皮下・筋肉内などに嚢虫が形成される有鉤嚢虫症を生じうる。

【Parenchymal NCC】
脳実質嚢虫症はそれぞれの病期に応じた画像所見を呈する。

➀Vesicular Stage
摂取された嚢虫は数週間で、頭節を含んだ嚢胞を形成し、数ヶ月の過程を経て、嚢胞は1cm程度まで大きくなる。均一な薄い壁を有する嚢胞で壁の造影効果や周囲の浮腫はほとんどない。嚢胞の内容物は髄液とほぼ等信号を示す。

➁Colloidal Vesicular Stage
数ヶ月を経て嚢胞は変性をはじめ、頭節の破壊がすすみ嚢胞内容物のタンパク質により、周囲の脳実質の炎症性変化を引き起こす。

CT検査:嚢胞内に高吸収の液体貯留、ring enhancementを認める。
MRI検査:T2強調像およびFLAIR画像で低信号のrimを伴う周囲の強い浮腫状変化を呈する。造影T1強調像ではCTと同様にring enhancementを認める。

➂Granular Nodular Stage
さらに嚢虫の変性は進行し肉芽を形成するようになる。嚢胞は縮小し、小さな結節状となっていく。
CT検査・MRI検査:ともに結節状の造影効果および小さなring enhancementを呈するようになる。周囲の脳実質には軽度の浮腫状変化がみられることがある。

➃Nodular Calcified Stage
最終的に結節状の石灰化をきたし、浮腫状変化や造影効果が認められないようになってくる。

CT検査:最も病変の描出に優れており、脳実質内の石灰化として描出される。
MRI検査:T1強調像およびT2強調像で低信号を呈し、検出が難しくなってくる。

 

・本症例ではColloidal Vesicular Stage・Granular Nodular Stage・Nodular Calcified Stageの混在と思われる。

・病変は単発のことも、多発することもある。
 上記の様々な病期の所見が混在することがあるので注意が必要であり、本症例も様々な病期が混在していた。

 


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