色素失調症 incontinentia pigmenti |
鑑別診断 |
出血を伴っていることより、破壊性脳症の可能性があり、ヘルペス脳炎などの感染症、急性脳症を疑う。
出生時からの皮疹が次第に増悪、感染兆候なく、先天性疾患を考慮し、
末梢血好酸球増多、網膜血管性病変から色素失調症と考えられた。
家族癧が明らかでないため、皮膚生検にて好酸球浸潤を伴う炎症像がみられ、診断が確定した。
最終診断:中枢神経病変を伴う色素失調症
色素失調症 Incontinentia Pigmenti (Bloch-Sulzberger 症候群) |
・母斑症のひとつ
・出生時もしくは出生後早期から特徴的な皮膚病変
・骨、歯芽、毛髪、眼の異常をともなうことがある
・てんかん、精神遅滞、痙性麻痺、小頭症、運動発達遅滞などの中枢神経合併症は約30%
・X 連鎖性優性遺伝(Xq28 領域)で、男性は致死的、女性に発症 罹患率は1:40000 女性と推定
・皮膚の正常化に必須のNF-κ-B(炎症の誘導や細胞増殖、分化への関与)の活性化を司るNEMO遺伝子の異常
・活性化障害により炎症や血管障害性病変を惹起、中枢神経病変合併例との差異は不明
・中枢神経病変と癌病変との程度が予後に影響
色素失調症全例に見られる皮膚の異常
第1 期(炎症期)では出産直後に水疱や膿疱が多数出現し、痂皮化。血液には好酸球が多数出現。
第2 期(疣状、苔癬期)には生後数週から数カ月に硬い丘疹が多発。
第3 期(色素沈着期)には生後3〜4 カ月ころから褐色の渦巻きや線状の模様を描いたような色素沈着が出現し、長期間続く。
第4 期(色素沈着消退期)では4〜5 歳ころから色素沈着が消退。
眼の症状
30%にみられ斜視が最も多く、先天白内障や視神経の異常がみられることがある。問題になるのは網膜の異常で、網脈の細動脈が閉塞する。閉塞は生後1 年以内に生じ、その後は進行しないとされている。網膜血管の閉塞が高度だと異常血管が発生し、眼内出血や網膜剥離を引き起こすなど未熟児網膜症とよく似た変化をきたし、失明や高度の視力障害に至ることがある。ただ病変には左右差があることが多く、両眼が失明することは少ない。
中枢神経画像所見:
神経学的異常を認める場合、多彩な所見
大脳白質病変、CT では広範な低濃度域、T1 強調像にて低信号、T2 強調像に高信号
皮質に及ぶ場合や脳室周囲白質の限局性・斑状病変のこともある。
小脳皮質や白質にも起こり得る。
出血性壊死、広範な脳浮腫、梗塞の場合もある。
脳萎縮や脳室拡大、小頭症、脳梁欠損・低形成、脳回形成異常なども認めることもある。
参考文献
・Lou H et al. AJNR Am J Neuroradiol 2008;29:431-433
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