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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第352回症例症例:呈示
第 352 回 東京レントゲンカンファレンス[2014年5月22日]
症例8 60歳代 男性
ポイツ・ジェガース症候群
Peutz-Jeghers syndrome
 
下部消化管内視鏡検査
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いずれもHyperplastic polyp

 

ポリポーシス

・定義;ポリープの個数が100 個以上に及ぶ.

・ポリポーシスの分類 遺伝性 非遺伝性
腫瘍性 家族性大腸腺腫症 (Gardner症候群)  
非腫瘍性 過誤腫性 Peutz-Jeghers症候群
Cowden病
若年性ポリポーシス
 
炎症性   炎症性ポリポーシス
Capポリポーシス
その他   過形成性ポリポーシス
良性リンパ濾胞性
Cronkhite-Canada症候群
Morson BC, et. al. Histological typing of interstinal tumours, WHO, 1976
CT enterography
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本症例では
食道を除く全消化管の過誤腫性ポリポーシス
口唇,口腔の色素沈着
家族歴(長男もPJS)にて,Peutz-Jeghers 症候群の診断.

固形癌の合併はないと判断.(肝の低吸収;静脈に沿った変性疑い)

 

鑑別疾患

・若年性ポリポーシス
 極めて稀.蛋白漏出性胃腸症の合併.
 全消化管に発生.
 高い癌化率;約10〜20% に大腸癌,約20〜40% に胃癌を合併.

・Cronkhite-Canada症候群
 蛋白漏出性胃腸症を高率に合併.90%に下痢.
 外胚葉性病変;皮膚の色素沈着,脱毛症,爪甲異常.

・Cowden病
 食道病変が特徴
 皮膚病変;顔面の外毛根鞘嚢腫,四肢の角化性丘疹,口腔粘膜の乳頭状変化.

 

Peutz-Jeghers 症候群

食道を除く全消化管の過誤腫性ポリポーシスと,口唇,口腔,手足などの色素沈着を特徴とする常染色体優性遺伝性疾患.
・診断
 1. 色素斑の存在(口唇,口腔粘膜,四肢末端など)
 2. 食道を除く過誤腫性消化管ポリープ
 3. 家族歴

  の3 徴候がそろえば確定.
 家族歴がなくても 1, 2 がそろえば診断可.

・食道を除く全消化管に発生.発生頻度は小腸が最も高く(小腸>大腸>胃>十二指腸),数も多い.
・大きさはさまざまであるが,大きくなるにつれ分葉状,有茎性となる.

PJSの合併症
【前期合併症】
 ポリープによる腸重積,出血,腹痛
【後期合併症】
・癌化;1〜3.8%
  ポリープの大きさに相関して腺腫,腺癌
  合併率が上昇.
  1 cm 以上では5% ,3 cm 以上では8.8〜15% が腫瘍化.
・悪性腫瘍
  消化器癌,子宮癌,卵巣癌,精巣癌,肺癌など.

PJSの検査,治療
【検査】
 消化管病変診断
 ・小腸造影
 ・カプセル内視鏡
 ・ダブルバルーン内視鏡
 ・CT enterography
【治療】
 原則,ポリープの内視鏡摘除.
 バルーン内視鏡での深部小腸ポリープ摘除.
 摘除するポリープの大きさの目安は10 mm 以上.

 

結語

・家族性発症の過形成ポリポーシスを呈するPeutz-Jeghers症候群の1例.
・ポリポーシス症例での小腸病変の評価にCT enterographyが有用であった.
・ひきつづき,頻回なpolypectomy, CT等による合併症のサーベイランスが必要.

 

 

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Moderator: 粕谷 秀輔