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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第354回症例症例:呈示
第 354 回 東京レントゲンカンファレンス[2014年9月4日]
症例5 70歳代 女性
骨盤部陳旧性神経鞘腫
ancient schwannoma in the pelvic cavity

 

画像所見
 
腹部CT(遅延相:連続画像)
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左卵巣静脈は退縮した左卵巣と連続
 
腹部CT(遅延相)  
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腫瘤の発生部位は卵巣以外
 
MRI
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腫瘤内には液面形成を認める。充実成分は拡散制限を示す
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線維性被膜あり
 
MRI  T2WI 矢状断像、冠状断像、横断像 
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画像所見のまとめ
●骨盤内多房性嚢胞性腫瘤
・大きさ:106×83×91mm
・嚢胞内容物:T2WI高信号、T1WI低信号、液面形成あり
・充実成分あり:一部に拡散制限あり
・嚢胞壁:T2WI/T1WI低信号の厚い被膜あり
・周囲のリンパ節腫大なし 腹水なし 

●その他
・右卵巣嚢腫(+)、左卵巣は正常。
・子宮は圧排が主体

 

img 摘出標本
術中所見では仙骨前面やや左側に強固に癒着
肉眼的に腫瘤内部には出血があり、嚢胞壁は白色〜黄色充実

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病理組織

 

陳旧性神経鞘腫 Ancient Schwannoma

【概説】
●神経鞘腫のvariant(Degenerated neurilemmoma).
●出血・変性・嚢胞状壊死に富む.
●これらの変性は腫瘍の長期間にわたる進展の結果.
●発症から手術まで平均8.3年(1〜20年)
●高齢者に好発.性差はない.
●好発部位:
 ・頭頸部、四肢に好発。
 ・後腹膜発生は比較的稀(仙骨近傍あるいは骨盤外側が多い)。(Isobe K, et al. AJR 2004)

【臨床症状】
●圧痛またはしびれが最多(86%)
●後腹膜原発の多くは無症状。診断時には腫瘍径の大きな例が多い。

【病理所見】
●変性および疎な細胞成分(Antoni type B)がびまん性分布を示すのが特徴。肉眼的には黄色調。
 粘性の高い領域、出血、嚢胞状壊死などが混在し、赤〜茶色を示す。
●他の軟部腫瘍(肉腫)との鑑別が困難とされる。
●免疫染色:S-100、vimentin、Leu-7が陽性を示す。(Isobe K, et al. AJR 2004)

【画像診断】
●CT/MRI:
 ・境界明瞭な腫瘤。線維性被膜により被包化。
 ・嚢胞周辺部(100%)および被膜(71%)に増強。
 ・石灰化(29%)
●核医学:
 ・骨シンチで中等度〜高度の集積(100%)
 ・Gaシンチで集積なし(0%)(Isobe K, et al. AJR 2004)

 

画像所見の特徴

MRI:
T1WIで低〜等信号、  
T2WIで等〜高信号、大きくなるにつれて内部に出血・壊死を伴う。

CT:
境界明瞭で内部は多房性あるいは嚢胞状変化を呈し、石灰化を伴う。神経孔の拡大、erosionを認める。

冠状断像では、腰椎レベルで左神経根との連続を認める。

(Takeuchi M, et al. Abdom Imaging 2008)

 

骨盤内陳旧性神経鞘腫の鑑別疾患

Serous/mucinous cystadenocarcinoma (ovary/retroperitoneum)
Abscess
Necrotic soft tissue sarcoma (GIST, Melanoma, Ganglioneuroma, Neuroblastoma, Hemangiopericytoma, Liposarcoma)
Necrotic metastatic lymphadenopathy

結語

・高齢者女性骨盤部に発生した陳旧性神経鞘腫の1例を提示した。
・疾患の絞り込みにおいては、正常卵巣を検出することによる卵巣外病変であることの判定、および腫瘍と仙骨神経との関連性の同定が重要である。


 


 

参考文献
・Isobe K, et al. AJR 2004; 183:331-336.
・Takeuchi M, et al. Abdom Imaging 2008; 33:247-252.
・Shanbhogue AK, et al. Radiographics2012; 32: 795-817.

 

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Moderator: 束野 博子