虫垂原発腹膜偽粘液腫 cystadenocarcinoma of appendix presenting with pseudomyxoma peritonei |
本症例の所見のまとめ |
▼ 造影CT | |
大網内に網状の軟部組織濃度が多発 | 虫垂の腫大、液貯留、内部に点状石灰化を認める 周囲脂肪織濃度上昇なし |
▼ MRI:T2WI | |
大網内部に不均一な信号変化を認める | 虫垂の腫大、液貯留を認める |
▼ MRI:T1WI |
大網内部に不均一な信号変化を認める |
▼ PET/CT | |
大網部分の SUV max=2.35 | 腫大した虫垂部分の SUV max=2.2 |
画像所見まとめ
CT:大網内に軟部組織濃度、虫垂腫大及び虫垂内部液貯留
MRI:大網内の信号不均一
PET/CT:大網内軟部組織、虫垂部分のSUV maxは比較的低値
鑑別診断 |
・腹膜偽粘液腫
・腹膜結核:リンパ節腫大や石灰化リンパ節などを認めない
・腹膜中皮腫: PETでの集積乏しい
・癌性腹膜炎:無症状、PETでの集積乏しい
・細菌性腹膜炎
・粘液型脂肪肉腫
高分化型虫垂粘液嚢胞腺癌による腹膜偽粘液腫
腹膜偽粘液腫 |
・腹膜に粘液様物質の入った多房性腫瘤が播種性増殖する疾患
・発生頻度:1〜2人/100万人
・好発年齢・性差:50〜60歳、男女比は 1 : 2〜5
・原発部位:虫垂や卵巣が多い。胃、小腸、結腸、胆道系、尿路系、子宮等の報告もあり
・横隔膜下、大網、Morrison窩、傍結腸溝、Douglas窩に粘液貯留
・症状:腹部膨満、腹痛、悪心、食欲低下、体重減少など
・治療:完全減量切除+腹腔内温熱化学療法
・病理学的に悪性でも臨床的に悪性の経過をたどることが多い。
虫垂粘液腫 |
・虫垂が嚢胞状に腫大した状態
・50歳以上の女性に多く20〜30%は無症状
・頻度は虫垂手術症例の0.08〜4%。この状態を起こすものとして、
➀虫垂粘膜の過形成による内腔閉塞(10%、予後良好)
➁粘液嚢胞腺腫(30% 、予後良好)
➂粘液嚢胞腺癌(60%、 5年生存率が20〜25%程度) がある
・画像所見:
虫垂壁が染まる場合、虫垂内腔への乳頭状隆起、限局性に結節部分を有する場合などは粘液嚢胞腺癌が示唆されると報告あり
虫垂粘液嚢胞腺腫と腺癌のPET/CT
・粘液癌は他の癌に比べFDGの集積が弱い場合があり
・理由としては以下の2つが考えられている
➀腫瘍径に対して細胞密度が低下している
➁腫瘍細胞の糖代謝が低下している
・腺腫と癌における平均値と標準取り込み値(SUV)の標準偏差は、腺腫が3.56 ± 0.68、腺癌が5.74 ± 2.26
・FDGの集積が低いからといって腺癌を否定してはいけない
参考文献
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