casetop
東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第364回症例症例:呈示
第 364 回 東京レントゲンカンファレンス[2015年11月26日]
症例2 10歳代 女児
先天性門脈体循環シャント+多発限局性結節性過形成
Congenital Portosystemic Shunt = Abernethy Malformation

 

 先天性門脈体循環シャント(Congenital Extrahepatic Portosystemic Shunt= Abernethy Malformation)
 
・1793年 John Abernethyにより報告
・Morganその他によりType1, Type2に分類
  Type 1 ・・・上腸間膜静脈、脾静脈の血流が肝に流入しない。
    Type 1A:上腸間膜静脈、脾静脈が合流せずに下大静脈に流入
Type 1B:上腸間膜静脈、脾静脈が合流。肝外門脈が下大静脈に流入
  Type 2・・・上腸間膜静脈、脾静脈の血流の一部が肝臓に流入。
Type I Type II
肝内門脈の欠損
女性、若年発症
多数の奇形;多脾症、回転異常、先天性心疾患
肝内門脈血流の残存
性差なし、妊娠28週〜69歳
少数の奇形


合併症
<肝疾患>
・脂肪変性、萎縮
・肝性脳症
  # 高齢者に多い。
  # 小児の場合肝性脳症に対して抵抗性があり、無症状なことが多い。
  # 60%以上のシャント率は肝性脳症の高リスクファクター
・肝腫瘍
 Mistinova et al.   肝腫瘍の合併 35/83例
 FNH(Focal Nodular Hyperplasia)  13/35

他、Hepatic Adenoma、Hepatoblastoma、Hepatocellular Carcinoma、Hemangioma など

 Solitary FNH・・・血管奇形との関連なし
 Multiple FNH・・・血管奇形(肝血管腫、毛細血管拡張症、門脈閉鎖)に関連

FNH発生の機序(仮説)
  門脈閉鎖により肝動脈血流の代償性増加
   ⇒重要な肝再生因子、ホルモン因子の供給の変化
   ⇒細胞機能の変化、形態変化

その他の合併症
<心疾患>
・心房中隔欠損
・心室中隔欠損
・卵円孔開存
・動脈管開存
・Fallot四徴症
<泌尿器疾患>
・多嚢胞性異形成腎
・腎盂尿管移行部狭窄
・膀胱尿管逆流
・交叉性融合腎
・尿道下裂
<肺疾患>
・肝肺症候群
・肺高血圧症
<胆道系疾患>
・胆道閉鎖症
・総胆管嚢種

 

治療

fig

 

本症例の経過

肺高血圧症に対し薬物療法施行。
肝障害、肝腫瘤に対し血液検査と超音波検査による経過観察中。

 



参考文献

  • Alonso-Gamarra et. al. Clinical and Radiologic Manifestations of Congenital Extrahepatic Portosystemic Shunts: A Comprehensive Review. Radiographics 31: 707-722, 2011
  • 松本由朗 その他 門脈走行異常−臨床的意義とその発生機序に関する考察 日消外会誌 16(12): 2112-2121, 1983
  • Chandler TM., et. Al. Multiple focal nodular hyperplasia lesions of the liver associated with congenital absence of the portal vein. Magnetic Resonance Imaging. 29:881-886, 2011

 

◀ 症例提示へ戻る  
Moderator: 松本 敬子