結核腫 soft tissue tuberculoma |
所見まとめ |
【主訴】左大腿部腫瘤
【現病歴】
以前から左大腿部腫瘤を自覚していたが、ここ数ヶ月で増大した。
直腸癌術後等で当院受診していたため、整形外科紹介となった。
MRI 所見 | |
▼ T2強調像/脂肪抑制T1強調像 | |
・大腿四頭筋の筋膜内腫瘤 ・血腫様の内部性状 ・腫瘤上縁に接する三角形状脂肪組織は恐らく非腫瘍性 ・DWI高信号領域は、概ね液体成分に対応 |
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▼ T2WI/造影後 | |
・腫瘤上部はT2WI著明低信号、造影後も境界明瞭 ・腫瘤下部はT2WIは中間信号、造影後も不明瞭な広がり |
▼ 腫瘤中央部/腫瘤下部 |
・横断像でも、腫瘤下部では筋膜に沿って境界不鮮明な増強効果の広がり →腫瘤上部が古い病変で、下部が増大?(リアルタイムでは指摘できず・・・) |
CT所見 | |
・腫瘤中央部レベルでは、辺縁に一部石灰化 ・腫瘤下部には石灰化なし 腫瘤内の脂肪濃度なし ・内部は水に近い濃度 |
当院での診断と経過
・高齢男性の軟部巨大腫瘍なので、MFH/UPSや脂肪に乏しい脱分化脂肪肉腫などの肉腫を疑った
・整形外科で術前に組織確定のため針生検が施行されたが、「壊死を伴う肉芽腫」の病理診断であった
・穿刺液からM. tuberculosis DNAがPCR陽性となった
最終診断:軟部結核性肉芽腫Soft tissue tuberculosis
・悪性腫瘍ではないことが判明したが、生検創が治癒せず開放状態となったため全摘を計画していた
・準備段階で広範脳梗塞を発症したため、大腿腫瘤への加療は断念し、急性期治療のみ行い他院慢性期病床へ転院となった
軟部組織の結核 |
・ある程度まとまった膿瘍構造を形成する場合と、浸潤性に広がる病変のいずれのパターンもある
・慢性化した肉芽腫を形成することもある(他臓器の結核腫や慢性膿胸などと類似)
・骨、滑膜炎の方が多く、それぞれ悪性腫瘍や膠原病との鑑別が問題になるが、どこにでも病変を形成しうる
De Vuyst, Dimitri, et al. European radiology 13.8 (2003): 1809-1819.
Soler, Rafaela, et alJournal of computer assisted tomography 25.2 (2001): 177-183.
本例を振り返ると |
・慢性膿胸やchronic(expanding)hematoma様の内部信号
・慢性病変の辺縁に新しい病変の増大
・ということを意識できていれば、悪性リンパ腫、肉腫に加えて結核再燃という診断を思いつけたかもしれない
(それでも難しいかもしれない)
参考文献
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