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第 366 回 東京レントゲンカンファレンス[2016年2月25日]
症例3 30歳代 男性 : 嚥下障害
多発性血管炎性肉芽腫症
granulomatosis with polyangitis


 多発血管炎性肉芽腫症(GPA; granulomatosis with polyangiitis)

・上気道、肺、腎を主として侵す壊死性肉芽腫性血管炎2)
・好中球細胞質抗体(ANCA;antineutrophil cytoplasmic antibody)の関与が示唆されている3)
 特にPR3-ANCAの陽性例が多い2)

頭頸部領域のGPA画像所見  
・肥厚性硬膜炎
・脳神経の造影効果
・脳実質内外の肉芽腫形成
・骨破壊を伴う鼻・副鼻腔炎
・血管炎に伴う虚血・梗塞
・視神経炎・視神経周囲炎
・可逆性後頭葉白質脳症
・下垂体病変
・迷路炎

GPAの脳神経障害
・GPAにおける末梢神経障害の頻度は 11–44 %4)
・GPAにおける脳神経障害は稀で 2-10 % 4)
・原因不明なことが多いが、局所の肉芽腫形成または血管炎性の機序が考えられる4)
・肉芽腫性の硬膜炎に合併することが多い4)
・MPO-ANCA陽性のGPAでは多発の脳神経症状が初発であることがある5)
・早期診断、早期のステロイド治療がよりよい予後に重要である5)

GPAに伴う脳神経障害の内訳4)
脳神経II、VII、VIIIが障害されやすい

頸動脈間隙の解剖6)
内頸動静脈、脳神経IX・X・XI・XIIが走行

 

 鑑別

頸動脈間隙にみられる病変:腫瘍性病変or炎症性病変

腫瘍性病変
【良性腫瘍】
・神経原性腫瘍
(傍神経節腫、神経鞘腫など)
・髄膜腫
・SFT               etc…

炎症性病変
・リンパ節炎:結核、SLEなど
・膿瘍
・炎症性偽腫瘍
・GPA(Wegener肉芽腫症)
・サルコイドーシス  etc…

頸動脈間隙の悪性腫瘍8)
1)上咽頭癌
・直接浸潤
・リンパ節転移
2)悪性リンパ腫
ほか、
転移性腫瘍、横紋筋肉腫etc…

 

 TAKE HOME MESSAGE

・頭蓋底の病変は見逃されやすい
・頭蓋底病変では腫瘍性病変以外にもGPAなどの炎症性病変も考慮する。

 



参考文献

  1. Watts R, et al. annuals of the rheumatic diseases 2007;66:222-227
  2. 塩沢俊一. 膠原病学 改訂6版 免疫学・リウマチ性疾患の理解のために. 丸善出版 2015:433-438.
  3. 青木茂樹, 他. よくわかる脳MRI. 学研メディカル秀潤社 2012:572-573.
  4. A Soderstrom, et al. Clinical rheumatology 2015;34:591-596
  5. T Nagashima, et al. Annals of neurology 1993;33:4-9.
  6. 尾尻 博也,他.頭頸部画像診断に必要不可欠な臨床・画像診断,画像診断 臨時増刊号,2011,vol31:s131-142,s203-204
  7. O.Kenechi Nwawka,et al.Granulomatous Disease in the head and neck:developing a differential diagnosis RadioGraphics,2014,34:1240-1256
  8. 多田 信平,他.頭頸部のCT・MRI 第2版  S390-396,S430-434