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第 366 回 東京レントゲンカンファレンス[2016年2月25日]
症例5 20歳代 女性 : ふらつき、つまづきなどの歩行困難出現。
1か月後、易転倒性出現。顔面打撲にて救急搬送
神経軸索スフェロイドを伴う遺伝性びまん性大脳白質脳症
hereditary diffuse leukoencephalopathy with neuroaxonal spheroids(HDLS)


 画像所見のまとめ

頭部CT
・白質容量低下(萎縮)、側脳室拡大
・側脳室前角近傍白質の点状微細石灰化
頭部MRI
・両側錐体路、脳梁、脳室周囲白質の拡散異常、T2延長
・白質容量低下(萎縮)、側脳室拡大
・脳梁萎縮

 

 鑑別疾患

脳室周囲白質病変や脳梁萎縮/異常信号を伴う疾患
・神経軸索スフェロイドを伴う遺伝性びまん性大脳白質脳症(HDLS)
・遺伝性痙性対麻痺
・多発性硬化症
・Neuromyelitis optica spectrum disorder(NMOSD)
・慢性トルエン中毒

 

 HDLS

・以下の病理学的特徴を有する白質脳症
 —髄鞘の消失
 —軸索消失/腫大(spheroid)
 —グリオーシス
 —自家蛍光を発する脂肪顆粒を有する貪食細胞の出現
・1984年にスウェーデンから14家系の報告
常染色体優性遺伝(孤発例もある)
・2012年に原因遺伝子同定
—コロニー刺激因子1受容体遺伝子変異(colony stimulating factor 1 receptor;CSF1R)
 —ミクログリアに発現
 従来の生検、剖検での診断から遺伝子診断が可能に
 今後は分子病態解明の可能性

疫学 
・発症年齢;39±15(8〜78歳)
・死亡年齢;52歳(36〜84歳)
・死亡までの罹病期間;6年(2〜29年)

症状
・不安、うつ、行動異常
・認知機能低下(高頻度)
・痙性四肢麻痺、Parkinson症状、錐体路徴候
・難治性痙攣
・除脳硬直
⇒この順に症状進行

診断
・疾患特異的な理学的検査所見なし
・遺伝歴があっても聴取できないことあり(孤発例もあり)
 ⇒よって診断のてがかりは頭部CTと頭部MRI
—頭部CT(1 mm)
点状微細石灰化(特異的)
⇒thin slice(推奨 1 mm)が望ましい
—頭部MRI
脳室周囲白質病変
 ー前頭・頭頂葉優位
 ー左右非対称
 ーまだら状、局所的
 ー癒合拡大
 ーDWI高信号(数か月間持続することあり)
吉田邦広:MS Frontier 2014; 3 (2):112-115.年齢不相応な側脳室拡大
 ー早期からみられる
 ー白質萎縮による(異常信号は遅れて出てくる)
脳梁菲薄化・異常信号
錐体路異常信号
皮質萎縮、脳溝開大
大崎裕亮ほか:脳神経外科速報 2014; 24 (9):980-986.

 

 Take Home Point

若年性の白質病変や錐体路異常に、脳梁萎縮や白質の点状石灰化を認めた場合HDLSを疑う

 



参考文献

  • Konno T, et al. Haploinsufficiency of CSF-1R and clinicopathologic characterization in patients with HDLS.Neurology 2014; 82: 139-148.