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第 366 回 東京レントゲンカンファレンス[2016年2月25日]
症例7 30歳代 女性 : 高校生くらいからしこりを指摘されていたが、最近増大してきた
慢性拡張性血腫
chronic expanding hematoma


 鑑別診断

・放射線治療誘因の悪性腫瘍
・良性の軟部腫瘍
・Chronic expanding hematoma

 

 Chronic expanding hematoma

・1980年にReidらによって、臨床的疾患概念が確立
・手術や外傷などを契機に生じた血腫が自然融解せず、慢性的に徐々に成長したものとされるが、これらの既往のない例も存在する
・1ヶ月〜50年にわたり、緩徐に増大するとされる
・画像的には辺縁や内部の一部に造影効果を認め、腫瘍との鑑別に苦慮することがある
・MRIでは新旧混在した血腫の信号だが腫瘍の否定は難しい
Reid JD, et al. JAMA 1980;244:2441-2

画像所見(CT)
・まとまった報告はないが、動脈相で比較的小さな範囲で濃染し、後期相にかけて同部から広がるのは特徴的かもしれない
Yamada T, et al. J Comput Assist Tomogr. 2003;27:354-6. ・被膜のみの増強で、内部に増強効果を認めない例も多い
中尾圭介ら. 日臨外会誌 2015;76(1):90-5.

画像所見(MRI)
・T2強調像で強い低信号を含む、不均一な信号
要は血腫
Yamada T, et al. J Comput Assist Tomogr. 2003;27:354-6.

Chronic expanding hematomaと放射線治療
・放射線治療が誘引するものとして悪性腫瘍や脳内の血管奇形が報告されている
・ParkらはAVMのガンマナイフ後に、AVMの残存も海綿状血管奇形も伴わない、遅発性(2-12年)のchronic expanding hematoma 5例を報告し、壊死組織からの繰り返す出血ではないかと考察
・Chaらは照射後のcavernous hemangioma (CH)と、de novoのCHを比較して、奇形血管の増生よりもinactive organizing hematomaではないかと考察
Park JC et al. J Korean Neurosurg Soc. 2015;58:83-8.
Cha YJ et al. Yonsei Med J. 2015;56:1714-20.
・体幹部領域における照射後のchronic expanding hematoma形成の報告は見られない

・ただし本例においては手術(腹壁に術後変化があり、背部は開けていない可能性が高いが)もされており、術後10年以上を経てから発症の報告も複数みられる
・後彎のために腰部を打撲しやすかった可能性もある

 

 Take home Point

・放射線治療後に発生したchronic expanding hematomaの1例を提示した
・単独の原因とは断定できないが、放射線治療の普及に伴って今後報告が増える可能性も考えられる

 



参考文献

  • Park JC,et al.J Korean Neurosurg Soc. 2015 Jul;58(1):83-8.