肛門管癌 anal canal cancer |
画像所見 |
造影CT
・直腸と連続する分葉状腫瘤。辺縁や内部に造影効果あり。
MRI
・T2強調像にて高信号を主体とする腫瘤。
・拡散強調像で拡散障害はあるものの軽度。
・T2強調像低信号域に造影効果を認めるが、T2強調像高信号域には造影効果は指摘できない。
術前診断:肛門管癌疑い
・内視鏡上直腸や肛門管の粘膜面に陰窩がある。腫瘤の突出は認めず。その他の下部消化管領域にも病変はなし。
・生検施行し粘液産生異形細胞は確認されたが、浸潤は明らかではなかった。
・肛門管癌疑いで術前に化学放射線療法(TS-1+RT)施行するも腫瘍は増大傾向。
・腹腔鏡補助下腹会陰式直腸切断術+大腿皮弁による被覆術施行
診断:肛門管癌(粘液型) Anal CANAL cancer
・肛門管部で粘膜下に管外型発育をする腫瘤。
・腫瘤は粘液を産生し、粘液湖は粘液産生悪性腫瘍細胞により裏打ちされる。
・間質内浸潤を認める。
・リンパ管侵襲、静脈侵襲、神経侵襲はなし。
肛門管癌 |
・肛門管:恥骨直腸筋付着部上縁〜肛門縁までの管状部。同部に発生した癌を肛門管癌という。(大腸がん取扱い規約より)
・発生学的に内胚葉と外肺葉組織の接合部にあたり様々な組織を呈する。
・大腸がんの2〜5%。
・男女比=1.2:1
・平均年齢=61.5(34〜85)歳
林賢:肛門管癌の臨床病理学的検討. 日消外会誌 22(10):24141-2420, 1989
組織
•腺癌・粘液癌:最多で約70%を占める。
•直腸型:単層円柱上皮由来。
•肛門腺由来型:病変の主座が肛門壁内にあり初期は粘膜面に腫瘍細胞が見られないもの。
•痔瘻に合併するもの:痔瘻のある肛門壁に発生するもの。
•扁平上皮癌:重層扁平上皮由来。
•腺扁平上皮癌
•類基底細胞癌
•未分化癌
林賢:肛門管癌の臨床病理学的検討. 日消外会誌 22(10):2414-2420, 1989 大腸がん取扱い規約より
肛門管癌(粘液癌) 画像所見
・粘液を反映したMRI T2強調像高信号の分葉状腫瘤。
・拡散強調像では粘液が大半のため拡散障害はあっても軽度。
・PET/CTでも集積の程度は強くなく、腫瘤評価や術式決定には寄与しにくい。
T2強調像で高信号を呈する直腸および直腸近傍から発生する疾患
・肛門管癌
・直腸絨毛腫瘍
TAKE HOME MESSAGE |
・肛門レベルでT2強調像を主体とする分葉状腫瘤を見たら肛門管癌を考慮する。
・術前に組織診断がつかないこともあり、画像から放射線科医が臨床医に積極的に働きかけることが必要。
参考文献