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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第368回症例症例:呈示
第 368 回 東京レントゲンカンファレンス[2016年5月19日]
症例6 50歳代 男性
遺伝性出血性末梢血管拡張症
Osler-Weber-Rendu disease

 

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縦隔条件CT
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肺野条件CT
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Right S3b AVF : Before and after TAE
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Left S6 AVF: Before and after TAE
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 遺伝性出血性末梢血管拡張症
 Osler-Weber-Rendu病 

診断基準(Curacao criteria)
1.繰り返す鼻出血
2.皮膚や粘膜の毛細血管拡張(口唇、口腔、指、鼻特徴的、他眼球結膜や耳も).
3.肺、脳、肝臓、脊髄、消化管の動静脈瘻
4.一親等以内の同一疾患患者の存在.(本例は妹、甥に同病あり)

以上の4項目のうち、3つ以上あると確診(definite)、2つで疑診(probable or suspected)、1つ可能性は低い(unlikely)
本例は4項目全ての基準に当てはまっており確定診断となった。

 

遺伝性出血性末梢血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia ; HHT)
Osler-Weber-Rendu病 

・常染色体優性遺伝
・HHTの原因遺伝子:第9染色体のendoglinと第12染色体のactivin receptor-like kinase type I (ALK-1)という遺伝子。
 共に、血管形成時の血管内膜の形成に関与。
・endoglinの変異(ENG変異)はHHT1(1型)、 ALK-1の変異(ACVRL1変異)はHHT2(2型)の原因遺伝子。

上記2つの遺伝子変異が臨床的には最多。

・他若年性ポリポージスを合併するHHT-SMAD4遺伝子変異(MADH4変異)、
 第18染色体や第7染色体に異常があるタイプHHT3,HHT4。第5染色体上の変異HHT3 locus(5q31.3-5q32)等も発見。
・発症形態(phenotype)は同じ家族でも患者ごとに異なる。
・男女差なし、10万人に1-2人の発生頻度。
・肺や脳AVMはHHT2よりHHT1に多く発生。

 

肺動静脈瘻と脳膿瘍

胸部X-P:
➀結節性もしくは屈曲陰影:1つ又はそれ以上の、拡張した肺動脈が拡張した肺静脈と連結し左房に還流。
➁Valsalva法にて大きさが小さくなる。
➂微小結節性陰影 → 毛細血管拡張。
➃動静脈短絡により、脳梗塞、脳膿瘍をおこす。

脳膿瘍:
➀病変内部の拡散制限(膿の粘度、細胞密度が高い為)
➁辺縁のT2強調低信号
➂T1強調高信号の被膜
(肉芽組織内のマクロファージが病原体を貪食する過程で持続して産生されるparamagnetic free radical磁性遊離基の関与)

 

  Take home message

・本症例は➀脳膿瘍の診断、及び➁背景にある疾患を胸部X線より推測し読影していただく事、を意図して提示した。
・脳膿瘍が疑われ原因病変が不明な時に胸部単純X線写真に背景となる疾患が投影されている事もあり。
 スクリーニング目的のX線写真等でも注意深い読影により原因疾患に辿り着くことがあり提示した。

 



参考文献

  • Enzman DR et al. Experimental brain abscess evolution: Computed tomographic and neuropathologic correlation. Radiology133:113-122,1979
  • Haimes AB et al. MR imaging of brain abscesses. AJR 152:1073-1085, 1989
  • Nestor L. Müller. C. Isabera S.Silva et al. Expert Radiology Series. Imaging of the chest. vol1.253-258. Saunders 2008.
  • Benjamin Felson. Chest Roentgenology. Chapter5.W.B. Saunders Company 1973

 

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Moderator: 林 高樹