casetop
東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第370回症例症例:呈示
第 370 回 東京レントゲンカンファレンス[2016年9月29日]
症例6 60歳代 女性
肝外発育型肝細胞癌
hepatocellular carucinoma (HCC), extrahepatically growing

 

 所見のまとめ
   
CT: 肝外側区から連続し突出する57mm×22mm大の腫瘤動脈相で濃染、平衡相でwashoutする。
肝表面、腹腔内には多数の染まり抜け結節。

EOB-MRI: 肝外側区から突出する病変、肝表面・腹腔内多発結節。
いずれもT2淡い高信号。拡散制限あり。
Dynamic studyでは、動脈相で濃染、平衡相で washout 肝細胞相で取り込み欠損

 

 鑑別診断

・肝細胞癌(肝外発育型)
・異所性副脾
・腹膜癌、腹膜播種
・類上皮血管内皮腫
・血管腫
・AFP産生腫瘍
・肝細胞癌(肝外発育型)
・異所性副脾:経時的変化はない
・腹膜癌、腹膜播種:原発巣を疑う所見はない。
・類上皮血管内皮腫:被膜陥凹所見(capsular retraction)が特徴とされる。
・血管腫
・AFP産生腫瘍

 

診断: 肝外発育型(肝外突出型)HCC

 

 臨床経過

腹腔鏡下肝S2部分切除+播種結節摘出術
術所見:肝左葉から茎状に突出、副葉発生の腫瘍疑い

病理診断:Combined hepatocellular and cholangiocarcinoma

Combined hepatocellular and cholangiocarcinoma, 35x80x8mm,
Fc (+), Fc-inf (+), Sf (+), s0, Vp1, Vv0, Va0, B0, sm (-), f0, pT3

所見:
Macro 約20mmの茎用部分を持つポリープ状に肝から突出する病変
Micro 腫瘤部では線維性結合織で囲まれた2つの結節
先端側は細胞質の乏しい類円形の腫瘍細胞が中索状・胞巣状に配列。
小腺管構造が混在。
hepatocyte-1、AFP陽性細胞が散在、CK19 (-)
管状配列部位はCK7 (+)
切除縁側は、中分化型腺癌の所見。一部にCK7(+)細胞あり。
c-kit陽性細胞 少数散在
播種結節は圧挫が強く、評価困難。

 

 肝外発育型HCC

1891年 Cristianiが報告

分類(Ichikawaら 1984年)

A 異所性発育型
  本来の肝臓と全く連絡が絶たれているもの

B 肝外発育型(狭義)
a) 有茎性:腫瘍と肝との間に茎が存在。
  肝外に存在する腫瘍の最大径が腫瘍茎より大きい。
  組織学的には、茎の部分には腫瘍はない。
b) 肝外突出型:肝内に腫瘍の一部があり、連続性に進展して腫瘍の大部分が肝外に突出。

発生機序
副葉、肝被膜下のGlisson鞘内への迷入肝組織、Riedel葉、肝硬変の突出部 からの発生

周囲臓器との関係
有茎型 多臓器への癒着。浸潤しやすい 寄生動脈  肝外突出型 関内浸潤、娘結節が見られやすい

治療・予後
有茎性 間の切除範囲は僅少でよいが、多臓器浸潤に対しての合併切除
肝外突出型 肝の切除範囲を十分にとることが必要。十分な切除範囲が取れれば、予後は良い

 

 Take Home Message

・肝外突出性病変、特に横隔膜に沿って進展する病変はaxial画像での診断が難しいので注意が必要。

 



参考文献

  • Cristian H. Des neoplasmes congenitaux. J del’anantet Physiol 1891; 27: 249-272
  • 市川長,他.肝外発育型肝細胞癌6 例の検討肝外発育型肝細胞癌の分類と外科治療。肝臓1984;25:806-812
  • 上辻章二、他。肝外発育型肝癌の臨床的検討。肝胆膵1991; 23: 107-115
  • 宮川昌巳、他。肝外発育型肝細胞癌の他臓器浸潤例の特徴と肝動脈に由来しない栄養血管の意義 肝臓2013; 54:257-265

 

◀ 症例提示へ戻る  
Moderator: 粕谷 秀輔