原発性卵巣癌(印環細胞癌)に伴う仮性Meigs 症候群 pseudo-Meigs syndrome related with primary ovarian tumor(signet ring cell carcinoma) |
CT所見のまとめ |
骨盤内腫瘤
・左卵巣静脈の関与
・辺縁優位の中等度に増強される充実部
・中央部に広範な乏血性領域
・両側胸水貯留+受動無気肺
・腹水貯留
→壊死傾向が強く、比較的多血性の充実性腫瘍(左卵巣由来)
病理組織学的診断:印環細胞癌
【治療後経過】
造影CT:明らかな骨盤部腫瘤以外に原発巣となる腫瘍は認めず。
上下部消化管精査:異常なし。
PET:異常集積なし。
まれな組織型ではあるが、左卵巣由来の原発性卵巣癌(印環細胞癌)と判定。
手術後、胸腹水貯留が自然消退したことからPseudo-Meigs症候群と考えられた。
最終診断:原発性卵巣癌(印環細胞癌)に伴うPseudo-Meigs症候群
Meigs症候群 Meigs syndrome |
・Meigs(1937)は腹水と胸水を伴った卵巣線維腫患者で卵巣腫瘍を摘出したところ、
術後自然に腹水ならびに胸水が急速に消失したことを認め、卵巣線維腫に伴う特異な症候群として報告
※Joe Vincent Meigsはアメリカの外科医(1892-1963)・線維腫のみでなく、他の良性卵巣充実性腫瘍(莢膜細胞腫、Brenner tumor、卵巣甲状腺腫等)でも
同様の現象がみられることが判明。現在は「良性卵巣腫瘍に胸腹水を伴う同様の症候」をMeigs症候群
またはデモン・メーグス症候群 De´mons-Meigs syndromeと呼ばれる。
・成因:いまだ明らかでない。間欠的な捻転などによる腫瘍の静脈やリンパの循環障害のため腫瘍表面から腹腔へ体液が漏出・貯留し、
さらに横隔膜に存在する間隙孔を通して胸膜腔に及んだものと考えられている。貯留する胸膜水は淡黄色の漏出液である。
・臨床症状:腹部膨満感や呼吸障害。※腫瘍が小さいと、胸腹水の原因が本症候群によるものであることを見逃がすことがある
pseudo-Meigs症候群 |
・悪性卵巣腫瘍や卵巣以外の骨盤内腫瘍でも類似した症状を呈することがあり、
この場合、仮性メーグス症候群 Pseudo-Meigs syndromeと呼ばれることがある。
・Pseudo-Meigs症候群を生じた腫瘍として、文献的に以下の病理組織型が報告されている。
卵巣:Krukenberg tumor (from colon, breast, and gastric cancer, or GIST),
Germ cell tumor (dysgerminoma, yolk sac tumor, teratoma
[including carcinoid tumor, Gliomatosis peritonei, Benign/malignant struma ovarii],
Serous/Mucinous cystadenoma, Serous cystadenocarcinoma, Capillary hemangioma,
paraovarian fibroma, Papillary adenocarcinoma.
子宮:Uterine myoma (Subserosal, Giant)
子宮広間膜:Leiomyoma
後腹膜:Fibroma (in a patient with Ebstein anomaly)
腎盂: Transitional cell carcinoma
SLE (Pseudo-pseudo Meigs syndrome)
・画像上の特徴として、比較的多血性・高度の壊死傾向・高細胞密度に加えて、腫瘍内外に蛋白漏出を疑わせる所見が見られた。
Take Home Message |
卵巣癌に合併する胸腹水が腫瘍摘出により改善した場合、Pseudo-Meigs症候群を考える。
参考文献