肉芽腫性乳腺炎 granulomatous mastitis |
画像所見まとめ |
【MMG】
・右:L領域にFAD、不均一濃度上昇、梁柱の肥厚、近傍の皮膚肥厚→右c-3
・左:所見なし→左c-1
【US】
・右乳腺4時方向に、長径47mm大の腫瘤(内部が不均一、後方エコーは増強部分・減弱部分の両方)を認めた。
【MRI】
・右乳腺D領域にてT1WIで筋と等信号、脂肪抑制T2WIで筋よりやや高信号、DWIで高信号
・広範に造影増強域を認め、内部の多房性腫瘤がリング状に濃染される
・time intensity curveは"rapid - persistent"パターンを示す
・右腋窩リンパ節腫大あり
鑑別診断 |
・肉芽腫性乳腺炎
・乳腺炎症性偽腫瘍
・非特異性乳腺炎
・結核、真菌、その他の感染症
・乳癌
病理(針生検) |
@組織学的に炎症性変化が目立つ乳腺組織が採取されています.リンパ球主体の炎症細胞浸潤を認め、中には少数の好中球が含まれています。既存の乳管、小葉が一部残存しています。また、炎症性変化により小葉、乳管が肉芽組織、線維化に置き換えられている部分を認めます
A右下の部分は好中球主体に集まった領域を認め、膿瘍としても矛盾しない所見です。左上の部分にはリンパ球浸潤、その間に線維化を認めます。時相の幅を認めることから慢性炎症変化が推測されます。
Bこちらのスライドでは肉芽腫形成を2つ認めます。
Cさらに拡大すると、肉芽腫は主に組織球や多核巨細胞から成り立っているのが分かります。(明らかな乾酪壊死は認めません。リンパ球は概して小型で異型は乏しい)
診断:granulomatous mastitis 肉芽腫性乳腺炎
治療
・局所麻酔下で切開排膿施行 ⇒検体: WBC(3+)、GP(-), GN(-), staphylococcus sp 1+
・抗生剤投与 ⇒CTM 600mg/日×約2か月間
granulomatous mastitis(肉芽腫性乳腺炎) |
・1972年にKesslerとWollochらにより報告された疾患
・比較的稀な疾患で、臨床所見や画像所見が乳癌に類似
・原因は論議中だが、@外傷や感染A経口避妊薬などを契機とした反応が考えられている
・Corynebacteriumとの関連、及び併存疾患として結節性紅斑が報告されている
・最終出産より5年以内の妊娠可能な女性に多い
・治療で定められたものはないが、一般にステロイド投与、切開排膿、改善ない時は外科的切除を考慮
granulomatous mastitisの画像所見
【MMG】
・局所的非対称陰影(44%)/境界不明瞭な腫瘤(11%)/境界明瞭な腫瘤(14%)
/梁柱の肥厚(11%)/皮膚の収縮・肥厚(55%)
【US】
・不均一低エコー腫瘤(52%)/びまん性膿瘍形成(33%)/びまん性・局所断片的不均一低エコー(13%)
【MRI】
・腫瘤(22%)/非腫瘤(33%)/両方(44%)
・膿瘍や脂肪壊死が腫瘤として認められる
・周囲や内部にnon-mass enhancement
・微小な膿瘍や肉芽腫
・早期濃染:slow(69%)/medium(26%)/rapid(5%)
・遅延濃染:persistan(64%)/plateau(36%)/washout(―)
take home message |
・granulomatous mastitis(肉芽腫性乳腺炎)は、乳癌との鑑別を要する良性疾患である
・炎症や膿瘍あるいは壊死を疑う所見が診断の手がかりとなるが、画像のみで鑑別するのは困難
・確定診断はエコーガイド下吸引式針生検が有用である
参考文献
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