膝窩動脈捕捉症候群 popliteal artery entrapment syndrome |
◀ MIP正面像 右膝窩動脈が一部描出されていません。 左まえ斜位で病変部を拡大したものですが、膝窩動脈は一部描出されていません。 その他の血管に口径不整や狭小化は見られません。 |
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◀ 動脈相の横断像 膝窩動脈:赤 静脈:青 腓腹筋内側頭:ピンク 左:腓腹筋内側頭は大腿骨の内側顆に付着しており、腓腹筋内側頭の内側に膝窩動静脈が走行。
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診断 膝窩動脈捕捉症候群 Type2
膝窩動脈捕捉症候群Popliteal Artery Entrapment Syndrome; PAES |
膝窩動脈捕捉症候群は、膝窩部の解剖学的異常による捕捉の繰り返しによって膝窩動脈の内皮傷害を生じ、最終的に閉塞、下肢の虚血性障害を引き起こす疾患群である
【疫学】
・男性に多い 1)
・30歳未満に多い 2)
・有病率:不明
参考データ
ー若年男性では0.165% 3)
ー剖検例では3.5% 4)
1)Sinha S, et al. J Vasc Surg 2012; 55: 252-62.
2)Collins PS, et al. J Vasc Surg 1983; 24: 143-9.
3)Bouhoutsos J, et al. Br J Surg 1981; 68: 501-5.
4)Gibson MH, et al. Ann Surg 1977; 185: 341-8.
一般的には6つのタイプに分類される
【分類】
Type1:膝窩動脈が腓腹筋内側頭の内側を走行する
Type2:腓腹筋内側頭が膝窩動脈の外側(膝窩静脈との間)へ偏位する
Type3:腓腹筋に副内側頭が存在し、膝窩動脈の外側(膝窩静脈との間)へ偏位する
Type4:膝窩動脈が膝窩筋の深部を走行する
Type5:Type1〜4のいずれかの形態を呈し、かつ膝窩静脈も捕捉される
Type6:膝窩動脈及び腓腹筋の解剖学的位置は正常だが、肥大した腓腹筋により、膝窩動脈が圧排される
【臨床所見】
・下腿の腫脹、疼痛、麻痺、感覚異常、間歇性跛行、潰瘍、壊死 1)
・ただし、無症状のこともある
・両側性のこともある(27〜67%)2)
1)S. Gourgiotis, et al. Vasc Health Risk Manag 2008; 4: 83-8.
2)Collins PS, et al. J Vasc Surg 1989; 10: 484-90.
【診断】
・血管造影がスタンダードとされてきたが、超音波、CT、MRI(MRA)が主流となっている
・鑑別疾患:閉塞性動脈硬化症、バージャー病、膝窩動脈外膜嚢腫
【治療】
・腓腹筋内側頭切離術、異常筋束切除術、バイパス術などの血行再建術
・外科的治療の長期成績は良好
1)Di Marzo L, et al. J Vasc Surg 1991; 13: 434-8.
参考文献
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