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第 380 回 東京レントゲンカンファレンス[2017年12月7日]
症例8 60歳代 男性 : 血尿、頻尿、排尿困難
前立腺導管腺癌
prostatic ductal adenocarcinoma


 鑑別診断

<前立腺>
通常型の前立腺癌 (Acinar adenocarcinoma)
特殊型の前立腺癌
悪性リンパ腫
尿路上皮癌 (Urothelial carcinoma)
神経内分泌腫瘍 カルチノイド
肉腫・癌肉腫
転移性腫瘍
炎症性腫瘤
<尿道>
尿道癌 

 

 前立腺導管腺癌(Ductal adenocarcinoma)

・前立腺導管上皮由来の前立腺癌である。病理組織学的に、管状、乳頭状、篩板状構築を示す縦長の核と好酸性の細胞質に富む高円柱状の異型細胞が特徴とされている。
・前立腺癌全体における導管腺癌の割合は、導管腺癌成分のみのpure ductal adenocarcinomaが0.2-0.8%、腺房腺癌成分との混在を示すmixed ductal adenocarcinomaが5%程度とされ、比較的稀である。
・pure ductal adenocarcinomaは、精丘周囲から発生し、前立腺尿道部へ乳頭状に突出することが多い。mixed ductal adenocarcinomaは、前立腺部尿道周囲のみならず辺縁域にも発生する。
・初発症状として肉眼的血尿や排尿障害が特徴的である。
pure typeではPSAが上昇しない症例がある。mixed typeでは、PSAが上昇していることが多い。
・通常の腺房腺癌と比較して、全体の前立腺癌特異的死亡率は有意に予後不良である。外科切除症例では、pT3症例の割合が多い。
・全生存期間は、pure typeで13.8年、mixed typeで8.9年(p=0.054)とpure typeの方が予後良好な可能性があることが報告されている。
・陰茎、精巣、骨、肝臓、肺、脳などへ転移するが、腺房腺癌と比較して、骨転移の割合が低く、肝臓と肺が転移の約半数である。

画像所見
尿道に近い前立腺導管より腫瘍が発生し、前立腺尿道に進展することがある。
T2強調像で、通常の腺房腺癌より高い信号を示す(Gleason score 3+3=6のlow grade conventional adenocarcinomasに相当)。
強い拡散制限を呈し、造影後に早期濃染-washoutを示す。
・不均一な信号を示す症例が多い。


 take home point

前立腺尿道部近傍に腫瘤を認め、PSA上昇を示さず、T2の信号があまり低くない場合には、前立腺導管腺癌も鑑別に挙げるべきである。

 

 


参考文献

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